鍋への不満が明らかに
伊藤さんたちが行った消費者へのグループインタビューでも、「少人数の世帯では、パウチのつゆが使い切れない」「残った鍋を連日食べることになり、飽きてしまう」といった悩みが、次々と明らかになったそうです。
またある民間の調査でも、家族そろって夕食を取る頻度が「週1~2日未満」しかない20~60代女性(既婚)が、なんと全体の約4割(17年ベターホーム協会)。
このとき伊藤さんたちは、「このマーケット(個食)に需要があるのか」と自分たちが改めて掘り起こしたことで、それまで顕在化していなかった「(従来の)鍋への不満」が明らかになったと実感したそうです。
容器を入れ替えただけでイノベーションに⁉
もし彼女たちが「この先も、従来型の商品を出し続けていればいい」と考え、新たなマーケットに目を向けなければ、予想外のお客さまの声にも気づけなかったかもしれない。ですが、いまだけでなく未来のおひとりさまや個食市場の可能性に着目し、消費者の不満を深堀りしたからこそ、「新たなヒット商品」を生み出すことができたのでしょう。
半面、うがった見方をすれば、「プチッと鍋」は従来の鍋つゆを、ポーションという別のタイプの容器に「入れ替えただけ」とも言えます。
ですが、たかが容器、されど容器。エバラ食品の宮崎遵社長は、ある取材に対し、「調味料は容器・容量で“イノベーション”する」との言葉を掲げました。「調味料を1人前のポーションに入れることで、新しい価値を提案した」との見方です(「DCSオンライン」17年8月1日掲載)。