おひとりさまブームから15年
だとすると、今後は4~5人家族を意識した「大型(大容量)」の食品より、1~2人家族に向けた「コンパクトサイズ」や「少量」のモノのほうが、売れそうだと思いませんか?
私が、初の著書『男が知らない「おひとりさま」マーケット』(日本経済新聞出版社)を書いたのは、04年4月。翌年には、いわゆる「おひとりさまブーム」が起こり、そこから15年間に渡って、おひとりさまマーケットの変遷を取材し続けてきました。
そんななか、私が今年8月21日発売の共著書〔『なぜ女はメルカリに、男はヤフオクに惹かれるのか?』(光文社新書)〕を書くにあたり、新たに取材した商品の一つが、エバラ食品の「プチッと調味料」シリーズ。
近年のおひとりさま、あるいは家族の「個食(家族一人ひとりが個人で食事を摂ること)」を意識して成功した好例です。シリーズのラインナップは8種28品目、18年度のシリーズ累計売上高は35億円にものぼります(19年3月現在)。
“時間差家族”のニーズも取り込む
最大の特徴は、いずれもコーヒーのミルクやガムシロップに使われるような「ポーション」(個別包装)タイプの調味料で、一人ひとりが都度、好みの調味料を選び、ポーション容器から注いで使えること。
「プチッと鍋」など「プチッと調味料」シリーズの開発に携わった一人、同マーケティング部の伊藤史子さんによると、「それまで家庭向けの鍋つゆ商品といえば、競合も含めたほとんどが『家族3~4人用』を想定していた」とのこと。
ですが先の通り、近年は結婚しないシングル男女の割合が急増しました。また、結婚して子どもがいるファミリー世帯でも、共働きで両親どちらかの帰宅が遅かったり、シフト勤務で夜勤だったり、あるいはお子さんが部活や塾でなかなか帰ってこなかったり、といった「時間差家族」が増えています。