もともとハンセン病施設入所者と職員のみが住む島だった

▼瀬戸内芸術祭で公開されている「ハンセン病の島」

2019年は瀬戸内の島々を舞台にした「瀬戸内国際芸術祭」の開催年だ。芸術祭は多くの島でイベントが開かれるが、2010年の第1回から高松市の大島もその中に含まれている。ここはもともとハンセン病施設入所者と職員のみが住む島であり、現在では唯一となった離島にあるハンセン病施設である。

大島八十八カ所
撮影=筒井 冨美
大島八十八カ所

島内には「四国八十八カ所のミニチュアコース」がある。かつて「四国八十八カ所を巡ると病気が治る」との俗説があり、『砂の器』のように病気によって故郷を追われて行き場を失った人々が遍路に出たが、道半ばで強制隔離されることも多かったという。そういった元巡礼者が入所後でも八十八カ所を達成できるよう島内に作られたそうだ。

大島解剖台
撮影=筒井 冨美
大島解剖台

古い住居を転用したアート作品や、一度は海底に捨てられた解剖台を再び引き上げた展示は必見である。島の歴史を知るコーナーもあり、強制隔離や中絶・断種といった人々の苦難の中にも、養豚や盆踊りなど楽しみを見つけて暮らしていたことがわかる。

私は医学生だった約30年前に初めてこの島を訪問した。当時は「やめたほうがいいのではないか」と身内にも反対されたが、それを押し切って薄暗い官用船で訪問した。

先日、何度目かの再訪を果たした。その際、自撮りに夢中の大学生たちを眺めつつ、島で採れた梅ジュースを出すカフェで一休みして、明るくにぎやかになった島の変貌に驚きつつ、入所者の余生が安らかであることを祈った。

瀬戸内国際芸術祭の夏会期は7月19日~8月25日の38日間。2019年からは大島への民間航路も承認されて周遊しやすくなった。芸術祭に興味のある方はぜひ訪ねてみてほしい。

大島カフェ
撮影=筒井 冨美
大島カフェ
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