部下が上司の言葉に耳を貸さなくなる瞬間

これらの共通項は何でしょうか。それは部下が上司の物言いについて「個人的な見解で言っているな」と感じていることです。部下は上司が個人的な見解を示したときに「言うことを聞きたくない」となってしまうのです。

では逆に、上司の言うことを聞かざるを得ない状況とはどういうことになるでしょうか。それは決め事に沿っている時、ということになります。

みなさんは、交通違反で切符を切られたことがあるでしょうか。はみ出し禁止など軽微なものならば経験のある人もいるでしょう。そういう人はイメージがつきやすいと思います。その際に、白バイ隊員が自分より若い人であっても最終的には罰金を払わざるを得ないですよね。つまり、従わざるを得ない。集団の中で統合され、共有されているルールに沿って上司が発言しているものは、基本従わざるを得なくなる、ということになります。

上司部下という関係性はあくまでも組織内の機能対機能という関係なのですが、これに、個人的見解をまじえたコミュニケーションが反復されると、上司部下の関係は、個人対個人となり、さらに好き嫌いの感情対感情の関係になりかわってしまうわけです。

よって、上司は組織内にルールを設定し、それにのっとったコミュニケーションをとらなければなりません。

感情型マネジメントはルールの確認から

では具体的にどのようなコミュニケーションが理想的なのでしょうか。ある介護事業者幹部(女性)の例で見ていきましょう。

【BEFORE】
例えば前髪が伸びてだらしなく見えるスタッフに対して、その子の家の環境や性格、タイミングなどを考慮して「前髪は目が隠れないように切ってきて」「身だしなみができてない」と否定的な言葉を使って感情的に指摘することもあれば、言わずに放置したこともありました。時間がたてば気づいてくれるかも、というおよび腰な対応になることもあり、対応にブレがありました。
【AFTER】
現在は、以下の3点を徹底しています。
・身だしなみを含め組織の「ルール」を周知(基準の設定)
・まず「前髪が伸びてるよ」ということを伝える(基準外であることを通知)
・できなくても、できていないことを伝えるのみにし、そこに感情は入れない(脱感情型マネジメント)

脱感情型マネジメントの第一歩は、自身の会社や管轄部署にルールが存在するか、明文化して共有されているか、文言はあいまいになっていないか、それに則った管理ができているかを確認していくことです。