部下への期待値をハッキリ伝えているか

次に、2番目のケースについて見ていきましょう。

2.上司部下間で交わされる指示、ルール、目標などが不明確

フランクリン・コヴィー氏のベストセラー「7つの習慣」で人間関係の不和についてこう書かれています。「人間関係の不和は相手に対する過度な“期待”である」と。

不和とは、好き嫌いの感情的な関係性と言い換えられます。そしてそうした感情的な関係性が生じる原因は、期待値に対する上司部下間の認識のズレなのです。

上司部下間で交わされているコミュニケーションは、「指示」「ルール」「目標」のそれぞれ伝達、管理に関係するものがメインです。具体例を挙げてみていきましょう。

【指示】なるべく早くやってね パフォーマンス高い人に情報共有して 等
【ルール】適宜、整理整頓しなさい 礼節をもった対応を行う 等
【目標】顧客ファーストな対応をしよう、リーダーシップの発揮、全力で取り組む 等

上記の例では、上司が部下に求める“期待値”があいまいなので、相互認識のズレが生じやすくなります。相互認識のズレは、家族間という近い関係においても起きることなので、会社という集団の中ではなおさら生じやすいといえます。そして「フツーこの期待値でやるだろう」という上司と「なぜ上司は怒っているのか」という部下の間で、徐々に感情的なコミュニケーションが生まれてきます。

感情を挟まない練習

では、どうすればよかったのでしょうか。こちらもビフォー&アフターでみていきましょう。

【BEFORE】
「これやっといて」と期限を示さず指示して、優先順位を部下に押し付けていました。それで、「まだ?」「まだです。今からやります」「いや、いいわ。私やるからかして。先にやってほしかったんだけどな。できると思ったからお願いしたのに」と結局自分がすることになりイライラ。部下に嫌味まで言ってしまいまさに不和な状態でした。
【AFTER】
以下の2点を徹底しました。
・「これを何日の何時までに終わらせて。終わったら報告ちょうだい』と伝える(明確化)
・相手に任せられるようになった(ゴールイメージの相互認識が合致)
そうすることで、以下のような変化が出てきました。
・完了報告を習慣化させることで、自分から確認する手間暇が軽減した
・マストを仮に守れなかったとしても怒りではなく、「あぁ、これならできるのか」「じゃあ次はこうしようかな」「相手の能力に他責した自分(上司)が悪かった。次から管理するポイントを変えよう」と新しい発見として受け止められるようになった

この例は単純な指示ですが、ルール設定や目標設定も本質的には同じプロセスを経ることで脱感情型マネジメントに発展させていくことができます。

忍耐は必要だ。しかし、感情は必要ない

このように、集団内の感情発生とその弊害は思いのほか、単純なメカニズムで起きていることがわかります。そしてその対処法もいたってシンプルです。

基準の策定や、取り締まり、あいまいさを排除していくプロセスでなかなか思い通りのスピード感で整っていかないこともあるでしょう。つまり、忍耐は必要と言えます。しかしながら、感情は必要ないことがご理解頂けたと思います。

大きな職責をもって、日々業務に取り組み、チームを率いているみなさんには、感情的になって疲弊する、という事態を何とか回避してほしいと思います。

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