部下のパフォーマンスを上げるにはどうすればよいか。メンタルコーチの大平信孝さんは、「相手に対して『期待』するとよい。実は、『自分は期待されている』と思い込むと、人は成長するということが科学的に立証されている」という――。

※本稿は、大平信孝『感情的にならず相手を「すぐやる人」にする34のコツ』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

「あいつはダメだ」が相手のパフォーマンスを下げる

いつも仕事が遅い。やるべきことをなかなかやってくれない。

あなたは、そんな人のことを心のなかで「あいつはダメだ」「使えないヤツだなぁ」と思いながら日々接していませんか?こんな思いや印象が、相手のパフォーマンスを下げる原因になっているかもしれません。

「ゴーレム効果」という言葉を聞いたことはないでしょうか。これは、アメリカの心理学者、ロバート・ローゼンタールが提唱した「まわりの人から期待されなかったり、関心を持たれなかったりするとパフォーマンスが低下する」という心理効果のことです。

逆に言えば、あなたが「考え方」を変えるだけで、そんな相手のパフォーマンスを上げ、「すぐやる人」に変えることができる可能性があります。

具体的には、相手に対して「期待」すること。実は、「自分は期待されている」と思い込むと、人は成長するということが科学的に立証されているのです。

光に向かって歩くビジネスマン
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期待することで相手のパフォーマンスは上がる

ローゼンタールはこんな実験を行っています。

ある小学校で、生徒たちに知能テストを受けさせます。そしてそのなかから無作為に数人の生徒を選び、担任の先生に「この子どもたちは成績が伸びる可能性がある」と伝えたところ、彼らの成績がほかの生徒に比べ大幅にアップしたのです。

つまり、担任の先生が「彼らには伸びしろがある」と信じたことで、日々の接し方や言動が変わり、結果的にその生徒たちの成績が伸びたと考えられます。

これを「ピグマリオン効果」と呼びます。「ゴーレム効果」とは逆で、「人は、他者から期待をかけられると、期待通りの成果を出そうとして成績や業績が伸びる」という心理学的な傾向のことです。

仕事でも子育てでも同じですが、「この子には無理」とか「この人には任せられない」という前提で接するよりも、「この子は、きっかけさえつかめば必ず伸びる」「この人は、信じて任せればきっと成果を出してくれる」と期待しながら日々接した方が効果的です。なぜなら、相手の自主的な行動を引き出しやすいからです。その結果、勉強や仕事のパフォーマンスが上がるのです。