※本稿は、大平信孝『感情的にならず相手を「すぐやる人」にする34のコツ』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
マルチタスクは相手の行動力を奪う
「相手の行動力を奪い先延ばし人間にする最強の方法」をご存じですか?
それは、「マルチタスク」です。一度に「あれもこれもやりなさい」と指示・命令して、キャパシティオーバーにする、つまり相手の実力や能力、限界を超えることを求め続ければいいのです。
食べ放題のビュッフェを思い浮かべてください。

目の前の相手は、すでに料理が盛られたお皿を両手に持っています。そこに、パンとサラダとデザートを無理やり盛ったらどうなるでしょうか。
席に戻るときに料理をこぼしてしまうかもしれませんし、誰かにぶつかってしまうかもしれません。たとえ席まで無事に運べたとしても食べきれずに残す、無理して食べて苦しくなる、おなかを壊すなど、どう考えてもよくない結果になりそうです。
こう聞くと、「そんな無茶なことはしないよ」と考える方が多いでしょう。でも、これが職場や家庭だと、案外やってしまいがちなのです。
相手はますます逃げたくなる…
たとえば、出勤直後のスタッフに対して、「今週締切のあの件はどうなった?」「別件だけど、会議の日程、今日中に決めて連絡するように」「先週の出張の旅費精算はまだ?」「そういえば、昨日メールで届いていた、○○商事の件はどうなった?」などと、一度に複数のことを依頼したり確認したりしていませんか?
あるいは、朝目を覚ましたばかりの子供に対して「早く起きなさい!」「顔を洗って歯も磨いてね」「学校からのお手紙あるなら出して」「給食袋はどうしたの?」「着替えた?」「朝ごはん早く食べちゃいなさい」などと、畳みかけるように指示を出した経験がある方もいるのではないでしょうか。
上司の立場からすれば、これくらいのことは「できて当たり前」。「簡単」なことなのだから、「一度にすべてできて当然」と思うかもしれません。でも相手にしてみたら、出社して息つく暇もなく、指示・命令と確認の嵐となれば逃げだしたくもなります。
子どもにしても、まだ眠くて完全に目覚めていないのに朝からガミガミ言われたら、布団に逃げ戻りたくもなるでしょう。経験不足、実力不足、あるいは体調不良や睡眠不足などで、それどころではない場合もあります。
さらに、矢継ぎ早に指示・命令を受けて、それを処理できないことが続くと、言われたほうは自信を失います。すると、相手は逃げたくなるので、ますます行動から遠ざかってしまうのです。