「人が育つ組織」を作るにはどうすればよいのか。メンバーマネジメントに携わる橋本拓也さんは「『人として大切なこと』を大切にする価値観と、小さな変化を積み重ねる『水質改善』を行うことで人が育つ組織になる」というーー。

※本稿は、橋本拓也『部下をもったらいちばん最初に読む本』(アチーブメント出版)の一部を再編集したものです。

まずは「人として当たり前のこと」を充満させる

これをお読みになっている方の所属する企業の中には、企業理念やビジョンなどが存在しなかったり、存在していても“お題目”になって機能していないところもあるかもしれません。

そんな場合は「あなたの組織」という水槽の中身を、きれいな水質にするところから始めます。

糸口となるのは「『マネジャーが考える人として大切なこと』を大切にする」という価値観です。「挨拶をする」「時間を守る」「目標を達成する」「お客様に誠実さを貫く」「仲間に感謝する」「自分の成長を大事にする」など、人として当たり前のことを組織に発信し、充満させていきましょう。

そうすることで、仮に企業理念がない企業であっても、あなたのチーム・組織のメンバーがイキイキと仕事をし、成果を出すことで他部署や全社にも良い影響を及ぼすことができるかもしれません。

さらに「会社は個々人の自己実現の舞台である」という価値観を入れます。

10人くらいの小さな組織であっても、メンバーは一人ひとり人生をかけて仕事をしています。会社という舞台を通して演舞し、自らの人生を歩もうとしているのです。

だからこそ、舞台はみんなのものであり、汚すようなことをしてはいけません。

このような価値観を組織に発信し、充満させていきましょう。

すると、あなたの組織・チームのメンバーが次にマネジャーになってチームを持ったときに、同じような価値観を重んじるチームを作ってくれます。

長い時間軸でこのような現象が増えていけば、もしかすると会社全体が良くなる可能性もあります。会社に不満を持つのではなく、まず自分のチームを人が育つ文化にすることに全力投球しましょう。

手を重ねて団結する人々
写真=iStock.com/JLco - Julia Amaral
※写真はイメージです

水質はいきなり全部変えない

人の育たない組織から人の育つ組織へ――悪い水質を良い水質へ変えていこうとするときに注意してもらいたいことがあります。

それは「いきなり水槽全部の水を入れ替えないこと」です。

もしも、マネジャーがいきなり「明日から必ず挨拶するチームにしよう、プラスのことしか話さないでいこう、時間を毎日絶対に守ろう」のように水質をがらりと変えようとすると、必ずと言っていいほど歪が生じます。

特に中小企業のような小さな組織の場合は、離職が多発して企業の運営そのものが立ち行かなくなってしまうでしょう。ポイントは半分ずつ、もしくは少しずつ変えることです。ハードランディングではなく、ソフトランディングで進めてください。