どこに行っても「お若いのにかわいそう」
そうして迎えたエコー検査の日。
マンモグラフィーにははっきりとがんは写っていないものの、しこりはあり、何かがあることは確実という、あいまいな状態でした。エコー検査を受けながら、「半年後に経過観察するか、すぐに細胞を採ってみるか、どうしますか?」と聞かれ、「グレーの状態のまま、半年待つのは精神的に苦しいので、白か黒かはっきりさせてください」と答えました。
このとき、この言葉を言っていなかったら、この決断がなかったら。
今、私はここにいないと思います。
入院も手術も人生で初めての体験というなか、30代だった私は、検査に行っても病棟に行ってもどこに行っても最年少。決まり文句のように言われた言葉があります。それが、「お若いのにかわいそう」という言葉でした。
自分では自分のことを「かわいそう」とは思っていないのに、同じがんの患者さんからも「かわいそう」と言われる。そのたびに、「そっか、世間から見ると私はかわいそうな人なんだな」と悶々とした気持ちになりました。
「お若いのにかわいそう」という言葉が出る背景には、「がん=高齢者がかかる病気」というイメージが根強くあるのだと思います。私自身も、自分ががんになるまでは、そう思っていました。
がんは「高齢者だけの病気」ではない
確かにがんは、年齢が上がるにつれて増えてくる病気です。
しかし、20代、30代でもがんになることがあります。「小児がん」という言葉があるように、子供もがんになることはあります。そして、乳がんや子宮頸がんのように若い人にも多いがんもあります。
ところが、当時の私は、部位ごとにさまざまな特徴があることなどもまったく知らず、「がん」は「がん」でした。大腸がんも肺がんも乳がんも、全部「がん」で一緒。それぞれの種類ごとに年齢的な特徴があったり、進行の特徴があったり、見つけにくさや見つけやすさがあったりということは知りませんでした。
いま振り返ると「なにも知らなかったな」と思うのですが、ほとんどの人のがんに対するイメージはこんなものではないでしょうか。ただ、がんは確かに高齢者に多い病気ではあるものの、高齢者だけの病気ではない、ということはみなさんに知っていただきたい事実の一つです。