シェアの原風景は、下町のご近所づきあい

シェアリングの概念は、2010年ごろに米国を中心に広がりました。日本で注目され始めたのは、15年後半から。当初はUberやAirbnbなど米国のプラットフォーム大手が中心でしたが、その後国内でもスタートアップ企業を中心にさまざまなサービスが展開されるようになりました。現在、シェアリングエコノミー協会には約200社が名を連ねています。

シェアリングエコノミー協会事務局長 石山さん愛用の「アイカサ」は、街中のスポットで傘を借りてどこで返却してもいい傘のシェア。

シェアの領域は「空間」「移動」「モノ」「お金」「スキル」に分類できます。内閣府では、18年「16年の市場規模が約5250億円に上った」とする試算を公表しました。国内総生産(GDP)を950億~1350億円押し上げる可能性があるとされ、今後が期待されます。特に個人間で行われるCtoCのシェアリングは、世の中のサービスのあり方をガラリと変えるかもしれません。

しかし、シェアの価値観自体は、古くから私たちの中にあったものです。たとえば、昔はお醤油を切らすとお隣さんに借りたり、お礼に多めに作った惣菜をおすそ分けしたりといった関係がありました。それは地域に根ざした信頼関係の上に成立していたシェアですが、ICTの発達によりそれが世界規模で可能になったのです。

そこでは、利用者間で評価し合うレビューやスコアが、信頼度を知る重要な尺度になってきます。相手を気遣い丁寧に振る舞うことで良い評価が得られ、利益を上げたり利用する側に回ったときのアドバンテージになる。この好循環がうまく機能しているサービスほど、浸透し根付いていくと思います。今後は複数のサービスで、そうしたレビューやスコアが共有されるようになるかもしれません。

課題もあります。たとえば、イノベーションのスピードに法整備や制度づくりが追いついていないことです。先に普及しつつあった民泊は、18年「住宅宿泊事業法」(民泊新法)が施行されましたが、これにより個人が事業者等を使わずに対価を得て旅行者を宿泊させることは非常に困難になってしまいました。一方、通訳案内士法の改正では、国家資格を持たない人でも、対価を得て外国人旅行者の通訳やガイドをすることが可能になりました。