この春から管理職やリーダーのポジションに就いて、戸惑っている人も多いかもしれません。「誤解」や「錯覚」など、人々の意識構造に着目した組織マネジメントのコンサルティングを手がける識学社長の安藤広大さんは「日本の管理職は力みすぎて疲弊している」という。肩の力を抜いて、でも部下の成長も業績も向上する秘訣とは?

日本の管理職はまじめすぎ

季節柄、この春から管理職になり「さあ私の出番だ」とばかりにやる気満々の人もいれば、まったく経験のない役割に「自分にできるのかな」と不安や恐怖が先行して憂鬱な人もいるでしょう。また、管理職ではなくとも新入社員が入ってきて教育担当を命じられたり、「新人さんにしっかり関わってあげましょう」という職場の雰囲気を感じている人もいるでしょう。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Masafumi_Nakanishi)

私が関わっている組織コンサルティングの現場では、管理者のみなさんがあまりにもマネジメント業務に“力み”すぎていると感じます。

世代的にはロスジェネ世代の方に多くこの力みを感じます。この世代は、自身が部下の立場の時はトップダウン型のマネジメントを受けてきたものの、いざ管理者になってみると部下はゆとり世代という人たち。とくに共感力の強い女性は、部下の気持ちが理解できすぎて管理者としての立場とのはざまで苦しむというケースも見られます。

例えば一時期話題になった部下とのOne on One(部下と1対1で行うミーティング)に時間をかけるなど、枝葉末節のテクニックを中途半端に取り入れてしまった結果、余計なところに余計な力を使い、自身が疲弊しすぎている。要は、“肩に力が入りすぎ”なのです。

上司としてなめられないよう、初めてチームを持った時から「即断即決。一度決めたら、絶対変えない」と心がけて、決めたら変えない、周りに影響されない人、交渉しても無意味な人、と自身のキャラクターを設定したものの、継続するのがとてもしんどくて……。
本能的に持っている母性があり「○○してあげる」や「○○してあげたい」という思いがある。そばにいて困っている時に助ける、フォローすることが女性ならではの感性であり、女性管理職のきめ細かいマネジメントと言い聞かせてマネジメントしています。でも、精神的には疲れます。

これらのコメントは我々が実際にトレーニングの現場で対峙した女性経営者・管理者の方々が話してくれた心情でした。

このような事態をなんとか打開できないだろうか。そういうスタンスでこの連載を書いていきたいと思っています。まじめなみなさんには“たかがマネジメント”という開き直りがあるくらいでちょうどよいのです。もっと肩の力を抜いていきましょう。

「されてうれしかったマネジメント」は正しいか?

経験のない業務に挑む際、参考にするのは先人であって、先輩や上司、ということが大いにあるでしょう。参考にするといっても、反面教師として「あんな風なマネジメントはしないぞ」ということもあるでしょうし、良い面を取り入れ「自分はこうされて嬉しかった」ということもあるでしょう。

そんな中、よく耳にするのが「寄り添うマネジメント」です。例えば以下のようなマネジャーは本当に多くいます。

私の場合、「見てほしい、聞いてほしい!」という承認欲求が強い部下時代を過ごしてきました。そのため上司になった時に、自分がして欲しかったマネジメント(よく聞いて、見て、知って、気遣う)を実践しています。
「何かあったら声かけてねー」と伝えて、大変そうだな、しんどそうだな、これはそばにいた方がよいかな、という感覚で判断してフォローする「そばにいてあげるマネジメント」をやっています。そばにいたら部下は安心するのではないか、という思いがあるので。
効果的なマネジメントを展開するには、部下との信頼関係が必要だと思うんです。そのためには接点時間を増やしていくのが重要かなって。寄り添うためにはまずは自分のプライベートを明かして、部下のプライベートまで把握しようとする。そして、部下の強みは何だろうと模索し、伸ばしていこうと考えています。

自分がしてもらって嬉しかったマネジメントを展開しているわけなので、圧倒的に是だろうと思う人も多いでしょうが、業務遂行上(つまり成果を追及する上で)必要な知識がある程度備わっている部下たちを相手にする場合、このマネジメントは誤りなんです。