「部下に嫌われたくない」は捨てよう

寄り添うマネジメントを展開している背景に、もし「部下に嫌われたくない」「いい人でいたい」という心理があるとするなら、みなさんが“配慮”すべき方向をまったくの逆方向に向けてほしいと思います。なぜなら、みなさん自身の評価者は部下ではないからです。部下の感情に好きか嫌いか、という評価は確実に存在するし、それをまったく意識しないということは非常に困難だと思います。

しかし、仕事においては、“あなた個人として”の評価を獲得する必要はないのです。少なくとも部下からは。みなさんは評価者たる上司が設定する成果に意識を向け“配慮”すればよいのです。あえて嫌われろ、ということではありません。みなさん自身の評価はあくまでチームパフォーマンスをあげることです。そして成果があがる、ということは顧客に価値を提供できていること、部下が成長していることの結果なのです。みなさんのポジションが何のために存在しているかの原点に立ち返りましょう。

「こういうことを言ったら相手はどう思うかな?」とか、「どういう風に伝えたら、ちゃんとやる気を出して動いてくれるかな?」と気遣いに気遣いを重ねて展開している“寄り添い”が、とりまく関係者全員にとって“損”だと知ったらもう続ける理由はないですよね。

管理職として「真の優しさ」とは何か

立場の違いや責任の大きさから、管理者と部下ではどうしても視点が異なってきます。みなさんが半年先、1年先の未来を見て意思決定している方針やルール、指示のそれぞれは、今現在を見て良し悪しを判断している部下にとっては理解できないこともあるでしょう。このギャップを埋めるべくして行っていた「寄り添い」から勇気をもって脱却したことで、組織として成果をあげられるようになったという声をたくさん聞いています。

今までは、相手に気を遣い過ぎるあまり、相談にのったり愚痴を聞くことに時間を取られ、部下への対応で一日が終わって自分の仕事がまったく終わらず、時には徹夜に……といった日もありました。しかし現在は、部下が行動した結果を週に1度確認し、未達があった場合は次の打ち手を考えて次の週に向けて行動を促すことだけを管理するようになりました。業績も継続的に達成できるようになり、本当に負担が軽くなりました。
「冷たい人だと思われたらどうしよう」という恐怖心は多少ありました。でも「寄り添うマネジメント」をやめてから短期間で成果に現われるのを経験でき、「きちんと言ってあげることのほうが必要で、これが正しいマネジメントなのだ」と確信できました。
「何が駄目だったのか」「それをどうしたら良くなるのか」と、部下の足りない箇所を見つけ出して改善へと導くことで、部下の成長を定量的にも確認できたことが嬉しかった。部下が自分自身でどうすればいいのか考えてもらうほうが本当の意味での「温かいマネジメント」になるのだと、確信することができました。

「管理者である私がするべきことは、組織として目標を達成すること」「管理者である私がするべきことは、部下が目標達成して成長すること」。この本来のミッションに忠実であることが、実は真の優しさなのではないでしょうか。

安藤広大(あんどう・こうだい)
識学社長。1979年大阪府生まれ。2002年早稲田大学人間科学部卒業後、NTTドコモ入社、06年ジェイコムホールディングス(現ライク)に入社し、子会社で取締役営業副本部長を務める。13年「識学」と出会い、独立。15年識学を設立し、社長に就任。19年マザーズに上場。

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