「寄り添うマネジメント」はなぜダメなのか

なぜ“誤り”かというと、あなた自身、あなたの上司、部下、顧客、とりまくすべてが”損“をするマネジメントだからです。

部下の意識から見ていくと、寄り添われている状態は、常に一挙手一投足を上司が見てくれて、話を聞いてくれて、困ったらフォローしてくれる、ということなので、「何かをしてもらったから仕事をする」という状態になります。この状態は、「給与を先にください、そしたらやります」とか「モチベーションあげてください、そしたら頑張ります」という意識構造と本質的には同じです。よって、寄り添って動かす、という管理を常態化させると「寄り添われないとやらない」となり、さらに悪化すると「やりたくないので寄り添われていないことにする」という意識にまで到達します。

本来、成果と報酬の関係は、成果が先に生み出されて報酬が発生するという順序であり、成果以上の報酬は支払われないわけですから、何かを与えてもらってはじめて動くという思考を助長するマネジメントは、部下が糧を得るための「成果を生み出す力」を養成できないことになります。転じて成長機会を奪うことにつながります。

管理者が精神的にもたなくなる

また、部下の人数が1名であればまだ与え続けて動かすことが可能かもしれませんが、人数が増えてきたら対応不可能になります。しかも、どんな寄り添い方をすれば動くかは千差万別なので、部下それぞれの価値観を読み解きながら個別対応することになる。これは管理者の時間的・労力的コストが際限なく必要になるし、精神的にもちません。

次に顧客の側からみてみます。与えられないと動かない部下たちの活動量は総じて少なくなります。そうすると、対峙している市場=顧客の中で、みなさんの会社が提供している商品やサービスを待っている人たちにはリーチしきれない。みなさんのマネジメントによって停滞した部下たちのせいで、本来、届けるべき顧客に価値提供がなされないということが起きるのです。