親の自宅と理解があってこそ入手できたニワトリであり、親への感謝が生まれ、関係も良好に保てる。経済的にひっ迫していると相続で揉めがちだが、「金の卵」が入ってくるとわかっていればそれも避けやすい。

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親の自宅を売ったら5000万円以上という人は珍しくないが、その資産を眠らせておいては実にもったいない。担保価値の下落や金利のリスクを念頭に置きながら、しっかりケアして「金の卵」を得るべきだ。

親の死後は自宅を売却して借入額を返済することになるが、評価額の半分の額しか借りていないため、残り半分の現金が残る。親の片方が亡くなった後は残されたほうの新居の費用、もしくは子が相続してもいい。

住むだけではなく、フローを生む資産に

もちろん、親の老後資金が不足しそうなら、その資金をリバースモーゲージで調達するといい。月5万円程度必要なら600万円程度を借り入れ、将来、残りの融資枠で資金を借り入れ、子の近くに中古マンションを買って近居する。自宅は貸す、民泊にする、といった使い方もできる。親に資金援助して子が貧乏になる、といった事態は避けられる。住宅ローンをまじめに返済してきたからこそできることであり、自宅が金の卵を生むニワトリというわけだ。

ただし、リバースモーゲージは、将来的に物件を売却して融資を清算するという性質上、利用可能な地域が首都圏や一部の都市圏に限られるし、マンションは対象になりにくい。その場合は自宅を売る、貸す、といった方法で活かす道がある。

子育てのために買った広い一戸建ては高齢の夫婦には住みにくい。それを子育て中のファミリーに売ったり貸したりして、自分達はコンパクトなマンションに住めば、差額が収益となり、快適に暮らせる。

いずれにせよ、重要なのは自宅の資産価値であり、資産価値が高ければ融資を受けられるし、需要の高い物件なら売りやすく、貸しやすい。もしも自宅の資産価値が低いなら、売却して、資産価値の高い物件に買い替えることも考えたい。

利便性が高いエリアの物件は、収益性の高さから資産価値が高まり、そうでないエリアでは価値が下がるという二極化は今後も鮮明になる。自宅を「金の卵」を生む資産と捉え、不良資産を優良資産に組み替えるのだ。優れた経営者と同様に、自らのバランスシートを基にしたやり繰りがお金を生むのである。

菅井敏之(すがい・としゆき)
元メガバンク支店長、不動産投資家 1960年生まれ。学習院大学卒業、三井銀行(現・三井住友銀行)支店長を経て独立、アパート経営に注力。著書に『お金が貯まるのは、どっち!?』ほか多数。
 
(構成=高橋晴美 撮影=初沢亜利 写真=アフロ)
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