吉田松陰:1830~59。長州藩・萩に生まれる。54年、海外密航を企て失敗、幽閉される。その間松下村塾を開き、高杉晋作、久坂玄瑞、伊藤博文、山県有朋らを育てる。59年、安政の大獄により刑死。

上意下達ではなく慈しみの心で接する

<strong>産経新聞編集委員 関 厚夫</strong>●1962年、大阪府生まれ。同志社大学英文科卒業後、産経新聞入社。現在、東京本社文化部編集委員として企画記事を中心に執筆。著書に『ひとすじの蛍火 吉田松陰 人とことば』『吉田松陰 魂をゆさぶる言葉』など。現在、産経新聞でコラム「次代への名言」を連載中。
産経新聞編集委員 
関 厚夫

1962年、大阪府生まれ。同志社大学英文科卒業後、産経新聞入社。現在、東京本社文化部編集委員として企画記事を中心に執筆。著書に『ひとすじの蛍火 吉田松陰 人とことば』『吉田松陰 魂をゆさぶる言葉』など。現在、産経新聞でコラム「次代への名言」を連載中。

昭和50年代の初め、NHK大河ドラマで、司馬遼太郎原作の『花神』が放映されていた。明治新政府の軍制の父・大村益次郎を描いた物語である。その中で、篠田三郎さんが好演する吉田松陰に惹かれ、最初に読んだ司馬さんの作品が『世に棲む日日』だった。

作品を読むうちに、出雲神話に登場する“因幡の白兎”ではないが、毛をむしられて震えながら立っているような、純粋無垢な松陰の姿が浮かんできた。戦前、吉田松陰はある種神格化された存在だった。そこに人間味のある新たな像を提示したという意味では画期的な作品で、私が一番好きな司馬さんの小説だ。