宮本社長は言う。
「全員一致で開発に取りかかったアイデアでも、ぜんぜん売れないものがあった。それは、多くの人の『ほしいものリスト』のなかにいったん入るけれど、優先順位は低いものだったから。ひとりでもいいから、リストの一番上に入れる人がいるような商品のアイデアでないと、だめなんです。とくに経済が厳しい今は、財布の紐も固くなっている。本当にほしいものしか買ってくれません」
現在、立石のもとには購入した人々からさまざまな意見が届いている。――79歳の人は「自分史を執筆するのに使っている」と連絡してきた。また、ポメラで俳句を詠む人もいれば、カルテの作成に使う医師もいる。記者会見でメモを取るのに使うマスコミ人も増えている。立石はそういった使用目的が多種多様になったことを知り、今はポメラの機能やデザインのブラッシュアップに取りかかっている。
最後に社長の宮本が会議のあり方について、語ったことをまとめておく。
「当社の開発会議では新入社員でもいきなりプレゼンさせます。会議に出る以上は新人だろうが、社長だろうが発言権は平等にするのがうちの方針です。ただし、平等にすると鶴の一声が出てこないから会議は長引くし、意見は分かれる。しかし、それでも発言権は平等にしていたほうがいい。会議が活発になって、いいプランが出てくる可能性が増える。私がやっているのはそれだけです」(文中敬称略)
※すべて雑誌掲載当時