インテルの創業者兼会長にして、IT業界の屈指の論客、アンドリュー・グローブが不確実性の中で、決断しつづけるための「直感」の必要性を説く。また、企業リーダーシップについて、取締役会改革の要とは何かにも斬りこむ。

02年、自身の半生記、『僕の起業は亡命から始まった!』を著したグローブと、ハーバード・ビジネス・スクール教授で、『イノベーションのジレンマ』の著者、クレイトン・M・クリステンセン、そしてハーバード・ビジネス編集ディレクターのウォルター・キーチェルの3氏が、転換期のリーダーシップのあり方、そしてその他の経営課題について今日、ビジネスリーダーが直面している課題について話し合った。

K(キーチェル) 絶えず技術変革を遂げる業界ではとりわけ、1つのビジネスモデルから他のビジネスモデルへの旅路は、リーダーシップにとって恐るべき挑戦だが、どのように対応しているか。

G(グローブ) 世の中がどちらに向かっているのかを本当に理解している者はいない。私もわからない。感触のようなものはあるが、決断は待ってはくれない。投資や人的な決断は、状況が明らかになるまで待ってはくれないということだ。決断は、迫られたときに、即決しなければならない。それから、その旅路ではあまりくよくよしないこと。プロとしての責任があるからだ。自分が落ち込んでいたら、部下のモチベーションを驚異的なレベルまで引き上げることはできない。だから、自分で自分のしていることがわからないと十分わかっていても、常に前向きでいなければならない。

C(クリステンセン) これまでに新たな破壊的成長ビジネスに参入し成功した企業を見てみると、ほんの2、3の例外を除いては、すべて創業者の手で経営されている。自分が創業者であるということで、組織の論理に反するような不合理で直感的な決定を下す自信はあるか。

G 私は死の谷に直面していても、自信に満ちたふりをしつつ、自信を築き上げるべきだと主張してきた。長年経営者の地位にあるおかげで、そして社員たちが、創業経営者利益は企業利益であると認識しているおかげで、自分が組織の上からも下からも支持されていると暗に確信している経営者がいるとしたら、それは創業者や大株主の1人、つまりその人の運命と企業の命運が表裏一体である場合のほうが多いだろう。そして──これはもっと複雑なことだが──創業者は、そのビジネスをおのずと把握しているはずだ。皮膚感覚でビジネスを理解している。

外部のマネジャー、つまりヘッドハンティングされたマネジャーなどの場合、多くのことに有能かもしれないが、そのビジネスに関する知識に支えられて今の地位に就いたわけではない。したがって、自分の直感にはあまり自信が持てないはずだ。決断は直感的なプロセスである。数字がなければ確証は得られないのだから。