サブスクの強みは「お客ごとに商品を変えること」
経済が成熟してきたわが国においては、モノを所有することへのこだわりを持つ人が減っている。かわりに、必要に応じてモノを使い、そこから得られる体験や満足度の向上を重視する人が増えた。シェアリング経済はそのよい例だ。トヨタの“サブスクリプション・ビジネス”は、この変化に適応することを目指している。
サブスクリプション・ビジネスとは、継続的に顧客に課金を行い、商品やサービスを利用し続けてもらうサービスを言う。ポイントは、デジタル技術を用いたカスタマイズ(顧客の好みに応じた商品やサービスを提供すること)にある。
サブスクリプションは“定期購読”と訳される記されることが多い。新聞や雑誌の定期購読はよい例だ。新聞を購読する場合、すべての利用者は、大量に印刷されたすべて内容が同じ新聞を購読する。ここに、カスタマイズという概念が入り込む余地はない。
一方、サブスクリプション・ビジネスでは、サービスの内容は顧客(個人)の需要や好みに応じて変化する。100人サブスクライバーがいれば、サービスの内容は100通りあるということだ。
デジタル技術の活用によって、ネット空間において一連の契約を完結し、ユーザーの好みに合ったコンテンツや製品の使用方法をリコメンド(お勧めする)ことも可能だ。それによって、顧客の関心や好みが深堀りされ、さらなる需要の獲得が期待される。音楽ストリーミングサービスであるSpotify(スポティファイ)はその代表例だ。
3年間に6種類のレクサス車を半年ごとに乗り換え
トヨタのサブスクリプションである「KINTO」は、まさに車との“付き合い方”を提案し、車を使う歓びを実感できる機会(コト)の創造を目指した取り組みだ。
サービスは「KINTO SELECT」と「KINTO ONE」の2種類。SELECTは3年間に6種類のレクサス車を半年ごとに乗り換えられ、月額料金は19万4400円(税込み)。ONEは3年間で5車種のうち1台を月額料金で利用するもので、4万9788円のプリウスから10万6920円のクラウンまで料金には幅がある。
契約はオンラインで完結し、車両の登録や税金も料金に含まれている。自動車のサブスクリプションは、スポーツカーやSUVといった異なる車種を乗り比べる楽しさに加え、限られた利用権を独占するという意味での“所有”に伴うコストを軽減するという意味で、新しいカーライフを人々に提供するだろう。