「定時退社」をきっかけに仕事のやり方が一変した
取引先との関係が業績に直結する営業部門では、「なりキリン」をどう受けとめているのだろうか。
「いやー。結構しんどかったです」
吉良雅之さん(キリンビバレッジ営業本部課長・入社10年目)は、4月に「なりキリンパパ」を体験し、久しぶりに定時退社したという。
営業先から帰社するのが16時頃。そこから3~4時間、内勤の仕事をこなすのが常だったが、17時半退社となると、残りはたった90分。
「一番苦労したのは、資料作りの時間を捻出することでした。直行直帰を多用したり、移動時間が短くなるようアポを調整したり。アポの合間の隙間時間も使いました。訪問件数を落とすと翌月の成果に響くので、アポ1件にかける時間を短縮するために事前に資料を送ったり、メールを電話に変えてコミュニケーションの方法を工夫しました。おかげで、時間感度が上がりましたよ」
呼び出しの電話は3週間目の朝9時。取引先に向かう直前だった。「えーっ!」と思わず声が出たが、「なりキリン」ではよほどの緊急事態でない限りルール厳守。先方に謝り、すぐに帰宅した。この担当者とはプライベートな話もするほど親しい間柄で、快く受け入れてもらえたという。
「定時に帰った日は、妻に指示されながら、掃除や洗濯をこなしました。家事はダメ出しされましたが、家族の時間が増えたのはよかった。長男が喜んで出迎えてくれるんです」
5月に第2子が誕生した吉良さんにとって、「なりキリン」はいい予行演習にもなったという。「本当に共働きだったら、分担や業務調整をもっと真剣に考えないといけないんだなと、考えさせられました」
「同期の女性が育児中なので、ママの事情は理解しているつもりでした」と話すのは、吉良さんの後輩・佐々木絢子さん(入社7年目)。「なりキリンママ」を体験して、「2割くらいしか大変さがわかっていなかった」と痛感したという。
「『帰りたい』と『帰らなければいけない』では全く違うんですね。定時退社でも仕事量は同じなので、まず仕事のたな卸しから始めました」
緊急度をもとにTo Doリストに優先順位をつけ、仕事の種類分けをした。結果、「仕事を終わらせる最短ルートは?」と常に考える習慣ができたという。