繁忙期でも22時にはオフィスが無人に
17年以降は、Web会議システムが導入され、4月に「コアタイムなしのフレックス制」が開始。さらに働きやすさは向上した。
従来のコアタイム(11時から15時まで)が撤廃されたことで、午後から自宅に戻り、パソコンでWeb会議に参加し、保育園のお迎えに行く――といったこともできる。時短との併用も可能だという。
「とはいえ、忙しい時期の時短はやはり後ろめたくて、当初は申請するのに勇気がいりました」と荒木さんは打ち明けるが、最近は育児中の社員に限らず、一人一人が効率化を意識しながら仕事を回すようになり、決算期でも22時を過ぎるとオフィスはほぼ無人になる。
「長時間労働を減らしていくのはいいこと。深夜近くまで働くと、集中力も続かないですから(笑)。ただ、経理部では書類やハンコが必須の業務もあって、まだ工夫の余地はあると思います。最近は、他社の経理部門の働き方改革の話をヒアリングしに行って、さらなる効率化を進めています」
従来の制度を大幅に見直し、新たな施策を次々と打ち出しているキリン。その狙いは、どこにあるのだろうか。キリン人事総務部長の藤川宏さん(入社32年目)は言う。
「働き方改革は、経営としての意思決定。昔のやり方ではお客さまの満足は得られない。働き方と仕事の与え方を変え、労働時間を短くする。結果、社員の多様性が活かされ、生産性の向上につながると考えています。育児や介護など、人によって制約もさまざまなので、マネジメントも多様にならないといけない」
ビール会社はかつて「男社会」だった。取引先の飲食店が夜遅くまで営業しているという事情もあり、長時間勤務を容認する“昭和のカルチャー”もまだ残っている。キリンでも、営業に配属される社員のうち、女性は1割程度。育児をしながら外勤の営業職を続けている女性はごく少数だ。
「仕事は楽しいし、活躍もしたいけど、ママになっても営業が続けられるの?」