しかし、それでもやっぱり日本一の大学。「読みやすいけど解き難い」のが東大の現代文の特徴です。課される問題がすべて記述式で、「これはどういうことか説明しなさい」「これはなぜか説明しなさい」といった、より深い読解が求められるものになっています。

選択式の問題で、「あらかじめ存在する選択肢のうち、どれが正しいかを選ぶ」ものであれば、選択肢の説明が合っているか間違っているかを判断するだけで済みます。しかし、「どういうことか説明しなさい」などのアウトプットを求められると、説明できるレベルまで深く文章を理解しなければならないのです。だからこそ、いくら平易な文章であっても解くのが難しい――これが東大の現代文なのです。

「自分の頭で考える力」を読書で磨く

こうした問題に備えて深く読解するためには、「どうしてなんだろう?」と疑問を持ちながら読むことが欠かせません。難しい文章を読んで「ここがわからないな」と疑問を持つというレベルでは足りません。たとえ簡単なわかりやすい内容の文章であっても、「そうは書いてあるけれど、よく考えるとこれってどういうことなんだろう?」など、当たり前に思えることにまで自分なりの疑問を持てるようにならないと、自分の頭で考えることにはなりません。そこまでできないと、東大の問題には対応できないのです。

だからこそ、東大の入試問題を解く訓練として過去問に取り組んでいる間に、東大受験生は「自分の頭で考える力」を鍛えることになります。トレーニングを続けることで、目の前にある文章や習った事柄について「これは一体どういうことなのか?」を深く考える習慣が身についてきますし、逆にそれができないと東大には合格できないのです。実は、僕も「自分の頭で考える」「疑問を持ってみる」ということができなかった結果、二回不合格になってしまいました。そして、「自分の頭で考える」ために必要になってくるのが、「本を読む」という行為なのです。

「この文章で言われていることって、本当にそうなのかな?」と思う部分が出てきたら、「違う本だとどう書かれているんだろう?」と、読書で疑問を解消する。「この問題は、どういう背景があって問われているんだろう?」と感じたら、読書で質問の背景を考えてみる。あるいは、「ここで考えられていることって、ほかの人はどう考えているんだろう?」と疑問を感じたら、読書でほかの人の考えを理解して自分で考えることに活かしてみる。
このように、読書は思考力を高めてくれるツールなのです。

だからこそ東大受験生は勉強する間になんとなく本が読みたくなる。本を読んで、自分の頭で考える訓練をしているのです。

入学後の授業でも大量の本を読まされる

さて、東大の入試は思考力を問うものであり、思考力を鍛えるために読書が有用だということをご紹介しましたが、東大に入学してから受ける授業では、どのように本を読んでいるのでしょうか。次は、この視点から東大生の本の読み方を考えてみます。

当たり前なのかもしれませんが、東大の授業は本当にたくさんの本を読むことが課せられます。週に1冊本を読んで来なければならない授業もあり、授業で使う分だけで年間50冊以上本を買わなければならないこともあります。