「学級崩壊を主導する子の親は学校に一切顔を見せない」
中学受験指導を始めて20数年がたつ。わたしは主として都心部の教壇に立っているが、数年前から「うちの小学校で学級崩壊が起きている」という報告をよく耳にするようになった。ひとつの小学校を例に挙げてみよう。
その小学校は東京湾岸エリアにある。周囲にタワーマンションが続々と建ち、そこに「子育て世帯」が転居してくるため、生徒数が急速に増えている。
その小学校では、高学年の約半数のクラスで「学級崩壊」の現象が見られるという。
教員の言うことを全く聞かず、立ち歩きながら友人たちとおしゃべりに興じている子。授業の途中でやおら立ち上がり、外に出ていこうとする子もいる。学校側は解決策として生徒の親に名目上「自主的な見守り役」ということにして、多くの親を動員、その鎮静化を図ったという。「見守り役」を務めた母親のひとりは、ため息交じりにこう語った。
「わたしが行っても無意味なんです。もうどうにかできるレベルではない。一番問題なのは学級崩壊を主導している子たちの親に限って小学校に一切顔を見せないことなんです」
過干渉の親は「無関心」な親よりマシである
こうした話は、この小学校に限らない。「学級崩壊の中心人物である子の親が小学校に来ない」という話は、中学受験指導をしていれば別の小学校に子を通わせる幾人もの母親からよく聞かされるエピソードである。
わたしは10年前に『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)という書籍を上梓した。そこでは、「子どものパンツに名前を書く親」「いつまでも一緒にお風呂に入る母と息子」「Excelで子どもの成績を徹底管理する父」など、中学受験期の子どもに対して「過干渉」の親たちの事例を紹介し、「子どもたちの自立を阻むな」と警鐘を鳴らした。
しかし、わたしはいまこう考えている。
子どもに対して「過干渉」の親よりも、「無関心」の親のほうがよっぽど問題ではないか、と。そして、そういう親が近年とみに増えてきているように思う。