70代の両親はほぼ寝たきりの生活。42歳長女は14年前に統合失調症と診断され、それ以来働いていません。ただし旅行を繰り返しており、毎月の出費は食費などを含め平均で計58万円以上になります。このままでは両親の貯金は底をつく。家計相談に応じたファイナンシャルプランナーが出した結論とは――。

28歳で統合失調症と診断された長女は現在42歳

筆者のもとに相談にやってきた次女(40)によれば、長女(42)は生真面目な性格でした。70代の両親の期待通りの生き方をしてきた人だといいます。「私に対しても優しく、いつもにこやかに接してくれました」。そんな長女に変化が現れたのは、本人が就職して5年経った頃でした。

普段の仕事ぶりを評価され、チームリーダーに抜擢された頃から「眠れない」と話すようになりました。早く結果を出さなければいけないと焦ったのか残業や休日出勤が多くなり、「気分転換に映画でも観に行けば?」「たまには休まないと倒れちゃうよ」と、家族が声をかけても、働くことをやめようとしませんでした。

会社に行けなくなったのは、それから数カ月経った頃です。突然「誰かが自分を殺そうとしている。部屋から出たくない」と、言いだしたのです。最初は、ストーカー被害にあっているのかと思い、警察に相談しましたがそういった事実はありませんでした。

幻覚・幻聴は日に日にエスカレートしていき、興奮して物を壊したり、泣き叫ぶようになったりしたので、病院と相談し、緊急入院。統合失調症と診断されました。28歳で病気が発症した長女は、仕事もやめ、以来入退院を繰り返す生活を続けています。

父は交通事故で脊髄損傷、母も脳梗塞で倒れ右半身麻痺……

※写真はイメージです(写真=iStock.com/kupicoo)

父(76)も母(71)も定年まで教師をしていました。2人とも、長女の回復を願って懸命に支えていました。次女は長女の病気が発症する前に結婚して実家を出ていたので、ここ14年間は長女のことは両親に任せきりでした。3人でどんな生活をしていたのかはわかりません。

ただ、調子がいいと、長女はよく次女に手紙を送りました。父が新車を買ってくれたのでドライブに行ったとか、両親と旅行に行ったときの写真を送るねとかいう内容でした。「ああ、もう大丈夫かな」と思っていると、長女がまた入院したと、母が泣きながら電話をかけてくる。その繰り返しだったと次女は言います。

<家族構成>
父76歳 1年前に交通事故で脊髄損傷 長期入院中
母71歳 半年前に脳梗塞で倒れ、言語障害・右半身麻痺に 特別養護老人ホーム入所中
長女42歳 28歳で統合失調症発症、ひきこもりに 障害年金2級受給中
次女40歳 別居・既婚(相談者)

1年前に父が交通事故に遭い脊髄を損傷し、身体が不自由でした。自宅で看ることができないので長期入院しています。母はずっと父の看護をしていましたが、半年前に脳梗塞で倒れました。母の入院を聞いたとき、次女は頭が真っ白になったといいますが、ショックを受けた人は他にもいました。

母が入院し、主治医から「麻痺が残るので、退院後は介護施設に入所したほうがいい」とアドバイスを受けたあたりから、長女の体調に変化がみられるようになりました。幻聴や妄想が再発し、夜昼構わず叫ぶようになったのです。近所の方に通報され、措置入院したのは1カ月前のことでした。

「えっ」

次女が入院費などを振り込もうと父母の預金通帳を確認したところ、退職金が残っているはずの貯金額が大幅に減っていました。長女の退院後も、同じペースで浪費すると、両親の資産は近い将来なくなってしまう。これではいけないと、ファイナンシャル・プランナー(FP)に相談することにしたそうです。