将来を気にするあまり急に「貪欲スイッチ」ON

何より不思議に思うのは、何がきっかけで、お金をたくさん持っていたいという「貪欲スイッチ」が入ったのかということです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/DNY59)

「僕たち世代は退職金も期待できないし、年金なんて80歳くらいまでもらえなくなるんじゃないですか? 貯金してもこの低金利じゃ全然増えないし……。とにかく将来への備えをいまからやっておかないと、悲惨な老後になりそうで怖いんです」

これは、「なぜそんなにたくさんの金額を毎月投資するのか」と尋ねた時の、家光さんの回答です。今後、年金額が減額されるのではないかという憶測や老後破綻の実例などを耳にしているうちに、お金をためずに散財している自分の末路を見てしまったようで、恐ろしくなったのだそうです。だから、「30代半ばからしっかりお金を貯めて増やすには投資しかない」と確信しのだそうです。

職場でもベテランと呼ばれる年齢になり、実際、大車輪の活躍をしています。仕事が充実するのはいいのですが、今の暮らしをないがしろにしたり犠牲にしたりするのは残念なことです。もっと暮らしを楽しみ、多くの経験をし、今後の自分の発展に向けて努力することも、家光さんの年代だからこそ大事なのではないかとお伝えしました。「自己投資も、将来への投資」だと。しかし、のれんに腕押しとはこのことで、ほとんどこちらの話を聞いていない様子でした。

生活費を極端に削る生活は、いつか破綻します。どこかに無理が来てしまいます。今のままでは、そうした時に対応できず、困ってしまう結果になってしまうはずです。

投資額を減らして「いま」と「近い将来」に貯金で備える

家光さんには改めて、「今のやり方は非常に心配です。投資だけが老後資金作りではないと思います」と伝えました。そして、投資も常に順調とはいかず、確実に増えるものでもないことも。

繰り返し苦言を呈する筆者の話を徐々に聞くようになった家光さん。考えに考えた結果、投資先として「iDeCo」と「つみたてNISA」は継続する一方、資産が増えることを夢見てリスクの高い投資コースを選んでいたアプリで株式投資するのは、いったんやめることにしました。他の2つに比べて、手数料が高かったので、損をするリスクが高いと判断したのです。

やめる際は、運用期間が短かったこともありマイナスになってしまいましたが、勉強代と考えました。そして、家計状況を正常化し、預貯金を増やしてから、もしまた挑戦してみたいと思うのなら、少額で再開する方向で考えることにしました。