これまでわたしたちがなじんできたキャッシュレス決済はクレジットカード払いだ。ネット通販からコンビニでの買い物まで、さまざまな場面でクレジットカードが使われている。ローンを活用することもでき、カードの利用者にとっては便利だ。
コストの低さも魅力
一方、クレジットカードの利用を受け入れる店舗側は、クレジットカード会社に対して“加盟店手数料”を支払わなければならない。手数料率は業種によって異なる。3%程度の業種もあれば10%近いものもある。また、カード決済の場合、毎月末で支払金額を確定し、翌月の決められた日に決済が行われるなど、実際の資金回収に時間がかかる。
ほかには、「スイカ」や「パスモ」などの非接触型ICカードを用いた支払い方法もある。だが、この方式ではカード情報を読み取る専用の機器の設置が必要だ。小規模事業主の場合は費用負担が重いため導入が進みづらい。
これらに比べて、QRコードを用いた決済は、さほどコストがかからない。利用者はまず、必要なアプリをスマートフォンにダウンロードする。その上で、ユーザーの情報が記録されたQRコードを店に示したり、店側が用意したQRコードを読み込んだりする。そのQRコードとクレジットカードなどをひも付けることで決済をする。店舗側は、専用の読み取り機器を設置する必要がない。
中国や東南アジアで普及進む
QRコード決済の普及が進むのは中国や東南アジアだ。中国では、阿里巴巴集団(アリババ)や騰訊控股(テンセント)などのIT企業がサービスを提供し、それが常識になっている。人民網日本語版が2016年5月に報じたところによると、中国都市部に住む消費者1000人へのアンケートでは、回答者の98.3%が「過去3カ月以内にモバイル決済を利用した」と答えたという。そればかりか、決済サービスは海外にも進出している。初期コストや決済手数料の低さが、大きな魅力になっている。
こうした動きが、日本の決済制度に変革をもたらしている。LINEは、2014年からQRコード決済を含むキャッシュレス決済を展開してきたが、今年7月には今後3年間の手数料無料化を発表した。その狙いはオンライン上での決済サービスを提供し、ユーザーに関するデータの確保と活用だ。そのほか楽天やヤフー、NTTドコモなどもQRコード決済を展開している。