世界で一番複雑な制度
参院選挙制度は、選挙区と比例代表に分かれているが、さらに選挙区は32の1人区、つまり小選挙区と13の中選挙区(2人区~6人区)に分類できる。
さらに、これまで「非拘束」だった比例代表に、今回の変更で「拘束」が混じる。来年夏に行われる参院選以降、選挙は、小選挙区と中選挙区、「非拘束」比例、「拘束」比例が混然一体となって行われることになる。
これだけ複雑な選挙制度は、世界でも例がない。当然ながら、どういう政治体制をつくろうかという理念のかけらも感じられない。街を歩いていると、増築、改築を何度も重ねてどういう構造なのかよく分からない家屋を見かけることがあるだろう。参院の制度はまさに屋上屋を架し、どういう政治体制をつくるのかという哲学のかけらもないのだ。
今回の「改革」は、15年の参院選以来、島根と鳥取、徳島と高知が「合区」となったことが引き金となった。4県には19年の参院選で改選を迎える自民党現職が4人いるから2人は選挙区からはじき飛ばされる。それを比例代表で救済するために当選確実な「特定枠」をひねり出した。さらに定数を増やした。まさに党利党略だ。
野党も「共犯」の疑いが強い
最後に野党のことも少し触れておきたい。
今回の法案審議で、野党側は自民党の対応を批判してきた。ただ、その姿勢は半身だったともいえる。これだけの選挙制度の改悪なので、体を張って対抗してもよさそうなものだが、採決が行われた18日の衆院本会議も、あっさり終了した。実は野党側も今回の改悪を歓迎する側面があった。
比例代表は中小政党にとって議席獲得しやすい制度なので、定数増は野党にとっても得なのだ。表向きは自民党を批判しておいて、腹の内は歓迎するということであったのなら「史上最悪」の選挙制度の変更は、野党も共犯だといわざるをえない。
(写真=時事通信フォト)