「つぶされるかもしれないので、口外しないでほしい」
この問題で被害女性は、早大に申立書を出す前に、現代文芸コースの主任だった別の男性教授にハラスメントについて相談している。ところが男性教授は反対にこの問題を口外しないように求めたという。
申立書によると、渡部教授と飲食店に行った数日後、東京・目白の喫茶店で、女性は当時同級生だった友人女性と2人で男性教授に、渡部教授のハラスメントについて相談した。同席の友人女性は当時の状況をこう述べる。
「男性教授と目白駅で待ち合わせ、駅前の喫茶店に3人で入りました。テーブル席で、私の隣に女性が座り、男性教授が対面に座りました。ハラスメントの内容を説明すると、男性教授は『渡部さんに悪気はない』『女性の態度にもすきがあり、男性を勘違いさせている』『このことを公にすると、現代文芸コースがつぶされてしまうかもしれないので、口外しないでほしい』といった趣旨の発言をしました。女性がぼうぜんとしていたのを覚えています」
口止めの事実について、プレジデントオンラインは男性教授に問い合わせたが、男性教授は携帯電話には出ず、メールで「本件については、大学広報に対応を一本化しており、個別には答えられません」と回答した。
早大は「申立をお受けできない場合もあります」
女性は今年に入り、ほかに被害者を出したくないと願い、早大のハラスメント防止室に渡部教授への処分などを求めた。だが早大の対応は女性の求めるものとはかけ離れていた。
女性は被害を訴えるうえで、父親の同伴を求めたが、早大は当初難色を示し、女性から抗議を受けるまで、同伴を認めなかった。また女性が退学手続き中だったことから「中退をされた場合には、申立をお受けできない場合もあります」とも説明した。
その後、早大は女性の訴えを受け止め、「苦情申立書」の提出を求めたが、書類の提出は本人の手渡ししか認めず、郵送や代理人の手渡しでの提出を一度は拒否した。
女性は「大学のハラスメント防止委員会のホームページには『被害を受けた学生・生徒および教職員等が、安心してハラスメントの苦情を申し立て、相談を受け付けられる窓口を設置します』と書いてありますが、実際には苦情申立書は被害者本人による手渡ししか受け付けず、電話の際も面談の際も相手方の面談員に名乗ってもらえないなど、とても安心して相談できる窓口ではなかった」と振り返る。