危機管理のエキスパート、マイケル・マクメーンの調査によると、危機的な事件への対処において、警察は三つの間違いを犯してきたという。すなわち、何もかも白か黒かで判断しようとし、早急に解決を図ろうとし、犯人の感情面に配慮しようとしなかった。

私たちも同じ間違いをする。じつは私たちも、時おり精神が動揺した人びとを相手にしている。それは職場の仲間とか、家族と呼んでいる人たちだ。彼らは要求をつきつけるテロリストではない(ときにはそんな風に見えるとしても)。たいていの場合、彼らはただ憤慨して、自分の言い分を聞いてほしがっているだけだ。

人質交渉人は、想像しうる最も緊迫した事態に対処するが、危機の最初から最後まで、彼らの態度は一貫して受容、思いやり、忍耐に徹している。

三段論法よりチーズバーガーが有効である理由

ここで再び友情に立ち返ろう。戦争と同じように、友情もまた私たちが本能的に理解するものだ。そして友情と関連が深い受容、思いやり、忍耐は、人間関係において焦点を合わせるべき最も重要なものだ。残念ながら私たちは、大切な人びととの多くの状況で、具体的な解決がなかなか図れないからだ。

人間関係の研究で知られる心理学者、ジョン・ゴットマンは、夫婦間の問題の69%は永続することを発見した。つまり、そうした問題は解決されないのだ。交渉型アプローチがうまくいかない理由もそこにある。したがって相手の話に耳を傾け、共感し、理解する必要がある。そうすれば、たとえこれらが問題解決に結びつかなくても、結婚生活はうまくいく。私たちがたがいの気持ちに寄り添わず、具体的な交渉に重点を置くときにこそ、破たんするのだ。

私たちは皆、気持ちの威力や効果を知っている。不機嫌なとき、人は別人のようになってしまう。たとえば空腹で機嫌が悪いときに何かを食べて復活すると、すべてがうまくいき、はるかに機嫌のいい人間になったりする。ある調査によると、食事は説得するための有効な手段であるという。

「人は提供された食事をとるあいだ、提供者に対して一時的に服従の心理状態になる。この心理は食事中が最も強く、食事後は急激に弱まっていく」

私たちはチーズバーガーがあるといい気分になり、商談をまとめるのに最適な心理状態になるというわけだ。