海外シフトできない製造業の未来は厳しい

さて、世界経済の激震が続くなか、2009年のマネー環境をどう見るか。

今、米国と中国が危機感を持って経済対策に乗り出しています。米国のオバマ新政権は大規模な公共支出を打ち出すでしょう。住宅価格を維持するために、公的資金による住宅の買い上げまでやりかねないといわれています。いずれにしても「何がなんでも経済を支えるぞ」というようなダイナミックな政策が出てくるのではないでしょうか。

米国経済が下落傾向にあるのは事実だとしても、「ドルが基軸通貨としての地位を失う」といった急激な変化は、今回の危機では起きないと思います。日本のバブル崩壊のとき、政府は財政出動を繰り返すことで本当の危機の到来を7~8年先送りしました。米国は今、その「先送り」に入ったところで、その間に経済が再点火するのかどうかが問われているのです。

また、中国も日本円にして57兆円規模の内需振興策を取ると発表しています。効果は未知数ですが、うまくいけば米中の経済が底なし沼には入らないという安心感が広がるはずです。一方で、円は今のところドルをはじめすべての通貨に対して独歩高の様相です。

株価予想などは得意ではないのですが、このような状況を踏まえ、あくまで期待値として日本株の将来を考えてみます。

まず注目したいのは内需株です。そのなかでも輸入関連企業の株が有望だと思います。輸出企業は今回の円高で大きな打撃を受けていますが、日本は輸出とほぼ同額の輸入を行っています。円高による損失のほうがクローズアップされがちですが、その分、輸入品を購入する日本国民は、どこかで同額の利益を受けているといえるのです。

流通や金融も相対的に強い業種だと思いますが、やはり期待をかけたいのは住宅です。住宅需要が起こらないと、日本の内需は喚起されない。日本の住環境は先進国のなかでは貧しいといわれますが、住宅を一回り大きくするだけで、大型家電や家具などの需要も出てくるはずです。

「日本は輸出立国ではなくなる」といいましたが、日本の製造業そのものを悲観視しているわけではありません。海運業と同様、拠点を海外にシフトしていけばまだまだ強さを発揮できると思います。逆に、日本に留まり続ける企業は、非常に厳しい状況に陥るでしょう。

(面澤淳市=構成 大杉和広=撮影)