現実には、今でもすでに対GDP比25%程度にすぎない製造業のシェアは、相対的に小さくなっていかざるをえません。米国並みの15%まで低下するかどうかはわかりませんが、この数字が上昇するとは思えません。

今後は世界中で、これに類する動きが表面化していきます。元へ戻そうとする力と、変わろうとする力とがせめぎ合い、やがては均衡点を見つけて安定化する。それが世界経済の次のステージになるわけです。いずれにしても、危機以前の姿とは違ったものになるでしょう。

今回の金融危機の大きさと深刻さを受けて、各国の政府・金融当局は金融市場に対するルールの整備・厳格化を打ち出しています。この動きは自然なものであり、粛々と進めなければならない。

なぜなら、金融市場はすべての経済取引の裏側に張りついているものですから、青果市場とか鉄鋼市場といった個別の市場に比べて、国境を越えたとてつもなく巨大なものです。が、規模に比して、ルール整備が不完全だったのです。

今後は証券市場、ヘッジファンド市場、預金市場という具合に巨大な金融市場をセグメント分けして、そこに対する厳格なルールをつくり、適用していくという動きが出てくるでしょう。

もっとも、国境を越えて巨額の金が往来する現代の金融を一国だけで制御することは不可能です。世界政府が存在しない以上、国と国との取り決めによってルールづくりを進めることが不可欠です。

ここで一言付け加えておきたいのは、ルールの厳格化と規制強化とは別物だということです。

日本国内でも「規制緩和は行きすぎだった」ないしは「失敗だった」と決めつけ、規制緩和に対する逆の考え方、つまり規制強化を当然ととらえる議論が出てきています。しかし、これは言葉に対する誤解から発しています。

規制緩和・規制改革とは、携帯市場とか家電市場、青果市場などなど、あらゆる個別市場において参入の自由や透明性が確保され、そのうえで公正な競争が行われるようにすることです。

一見すると自由放任状態にすべしと主張しているようですが、実は違います。なぜなら「公正な競争」を実現するには、その前提として、優越的な業者による独占を許さないとか、企業経営に透明性を求めるといった厳格なルールが必要だからです。

つまり金融市場に厳格なルールを持ち込もうとしている今の動きは、規制緩和に逆行しているというよりも、公正な競争状態をつくるための正常な動きだと見るべきなのです。