アジアの株式市場は非常に安定感がある
世界で同時に起こった今回の景気後退の現象は、人類にとって初めての経験だ。過去の世界経済では、地域によって景気の循環にばらつきが見られ、2000年の世界同時に発生したIT不況も、ネット関連という特定の業態に限られたものだった。ところが、今回はあらゆる業態、セクターが悪い。金融・経済危機が幅広くグローバルに拡大している点が、今回の大きな特徴だ。
そして、第二の特徴は景気悪化の伝播の速さにある。昨夏まで経済・金融危機はゆっくりと進行していたが、リーマン・ブラザーズショックで一気に加速した。日本だけでなく欧州の政治家も、ごく最近までアメリカで起きた金融危機は他人事で、実体経済への影響も軽微だと考えていた。だが、現実には欧州でも金融危機が表面化し、実体経済にも波及して、製造業も大きな打撃を受けている。注意すべきは、日本の景気は悪化しているものの、欧米と違って金融セクターが直接的な危機に晒されていないことだ。
各国の経済回復の見通しは、欧米などの金融危機が発生している国と、日本をはじめとするアジア諸国のような影響を受けていない国に分けて考えるべきだ。もし金融システムが揺らぐほどの深刻な危機が起こったとすれば、単なる不況だけにはとどまらないだろう。歴史的に見れば、不況を抜け出すには平均3~5年程度の歳月がかかるからだ。
では金融不況がなぜ厄介なのかといえば、通常の金融政策が効かないからだ。銀行はバランスシートの縮小を迫られ、金利を引き下げたとしても貸出金利はなかなか下がらない。借り手も多額の借金を抱えているから、借金を減らそうと躍起になる。