コンサル会社から楽天へ転職した後、起業

【田原】大学はそのままロンドンにいく。日本よりよかった?

【天沼】高校は全寮制だったので、外で文化に触れる機会は少なかったんです。現地で1人暮らしをして生活に溶け込んだときに、自分がどう感じるのかを知りたくてイギリスに移りました。最初の1年はドーバー海峡の近くにいて、あとの3年はロンドン大学で、コンピュータインフォメーションを学びました。コンピュータサイエンスというより、情報をどう取り扱うかといった学問です。

エアークローゼット 社長兼CEO 天沼 聰氏

【田原】大学卒業後の2003年にアビームコンサルティングに入社される。どうしてその会社に?

【天沼】将来、独立してチームで何かやりたいなという思いをずっと持っていました。チームを組んだとき、私は尖ったスペシャリストより、幅広く知見を活かせるジェネラリストになりたかった。広く能力を開発するなら、コンサルティングファームがいいなと。アビームには9年勤めました。前半はITシステムの現場に近いところで経験を積んで、後半は中央省庁や大学、病院といったセクターに向けてシステムや調査のコンサルティングをしていました。

【田原】そして楽天に転職。どうしてですか?

【天沼】アビームで自己成長できた実感はありましたが、起業するにはまだ足りないものが3つあると思っていました。1つ目はグローバルなビジネス経験。将来は世界を舞台に事業をやりたかったのですが、クライアントが中央省庁だと、そうした経験を積みにくい。2つ目は、組織をつくる経験です。それまでやってきた仕事はプロジェクト型で、必ずゴールがあります。そうではなくチームとしての大きな目的に向かって継続的に成長する組織のマネジメントをやってみたかった。

【田原】3つ目は?

【天沼】コンサルティングファームって、上司を含めて全員が同じ“コンサルタント”です。自分で起業したら、チームにはデザイナーやエンジニアなどの幅広い人材が必要になる。多種多様な人たちと一緒に仕事をするなら、事業会社のほうが良いと判断しました。

【田原】楽天では具体的に何を?

【天沼】世界に13あった海外拠点をサポートする組織を立ち上げからやらせてもらいました。たとえばアメリカの子会社の購買率が下がって困っていたとしたら、国内の事例を教えたり、分析官やエンジニアを送り込むといった支援を行います。いわば楽天社内の海外向けコンサルティングファームですね。