盛り上げるために猥談を繰り返してしまった

「この前の営業提案はとてもよかった。みんなが気付かずにいた点を指摘してくれて助かったよ」「いつも熱心に取り組んでくれてありがとう」と仕事に熱心な社員に普段からできるだけ声を掛けるように心掛けていた経営者がいた。その会社には、仕事はできるが社内で猥談をして、女性社員からひんしゅくを買うことが多い営業課長がいた。

さらに課長の部下には、非常に聡明な女性社員S子がいた。成績優秀で、経営者もその能力を評価していた。課長は、S子が成果を上げれば、都度ほめていたが、S子はそれほど嬉しそうには見えなかった。一方で、経営者からの何気ない一言には嬉しそうにするS子がいて、さすがに課長も気になっていた。

「S子は、俺が褒めても嬉しそうにしないのに、社長には些細なことを褒められても喜んでいる。どうしてあんなに違うんだろう……」

社長や総務課長の女性と昼食をとっていたとき、営業課長は口にした。すると長年女性社員と交流してきた総務課長から厳しい一言が飛び出した。

「いくら営業手腕があっても、女性の前で猥談をする男性上司が嫌なんですよ。女性社員から尊敬されるよう振舞わないと、他の女性社員からも相手にされなくなりますよ」

場を盛り上げるつもりの猥談がセクハラと受け取られ、人格さえも疑われていたとわかった課長は、相当なショックを受けた。

経営者は「みんな、君が仕事ができる人だと認めている。女性社員が嫌がることはやめて、従来とは違う方法で部下とコミュニケーションをとったほうがいい」と助言した。営業課長は深く反省し、人前で猥談を披露するのをやめた。しばらくして、新人女性社員が配属されS子はそのOJTを任された。それから月日が流れた。

「S子先輩、課長は仕事ができるし部下の話にもよく耳を傾けてくれます。本当に立派ですよね……」

と新人に言われ、確かに課長は昔とは変わったな、とS子も思った。

男性ばかりの職場なら許されても、女性社員が多い企業ではタブーな会話が存在する。女性社員は尊敬できる上司についていく。社内での言動に配慮し、つまらぬ誤解から軽蔑される上司になってはいけない。

女性社員が働きやすい環境を作りたいなら、経営者は自身だけでなく、幹部の行いやその評判にも、目を配っておく必要がある。