「女性で大丈夫?」で腹を決めた
大阪北支店大阪中央支社で働く安井純子さんもリアーズの1人だ。職場は、大阪市街のど真ん中を突き抜ける御堂筋のたもとに立つビルの中。07年に派遣社員として働き始める。職場は自宅のある奈良でもっぱら事務の仕事に携わった。上司から「エリア社員に応募してみないか」と誘われ、09年に登用される。
エリア社員はおおむね通勤時間が片道1時間半以内で、転勤を伴わない職種だ。対して全国転勤があるのがグローバル社員だ。
今まで事務担当でありながら、14年4月、上司から「大企業相手の営業をやってみないか」と言われ、「やってみたいです」と即答した。
「事務は契約が終わった後の処理です。その前の契約を結ぶ場面の仕事がしたいと思いました」
安井さんが事務から営業に転換した背景には、同社の女性たちの活躍推進がある。かつて男性は総合職で基幹業務、女性は一般職で定型業務と明確に区分されていた。その後、10年にコース別人事制度を廃止し、総合職はグローバル職、一般職は業務職からエリア職と名称を変え、エリア職でも基幹業務を担い、管理職に登用される道がひらけた。つまり、グローバル職との違いは転勤を伴う異動があるかないかだけになった。女性たちの「自分たちの仕事はどうなってしまうのか」という不安の中、新しいエリア社員は船出し、1つの可能性が営業担当をしてみることだった。
実際、安井さんが営業に出ると、「なぜ女性なの?」「女性で大丈夫?」と言われた。
「言われたことにきちんと応え、その積み重ねで信頼関係を築くしかない」と腹を決めた。
15年7月に主任となり、入社1年目、2年目の経験が少ない女性営業担当の指導に当たることになる。「どうやったら代理店の担当者にアプローチできるのか」など、悩み多き新人たちに答えとなる事例が欲しかった。
そんなときリアーズが立ち上がり、知恵を借りたくて参加。
「営業するときの服装や接待マナーから始まり、役立つ情報がもらえました。いつもフワフワとした服装をしている子に、スーツで行ってみたらとアドバイスすると、『代理店の担当者に話を聞いてもらえました』とうれしそうに帰ってきました」
リアーズは新人、若手の女性営業担当を応援するとともに、安井さん自身にも大きな刺激を与えた。
「私は企業や企業グループに設置されている代理店を担当する企業営業店で営業担当をしていましたが、一般店と呼ばれる、保険を専業とする代理店や、整備工場代理店を主に担当する女性たちが、私よりももっときめ細かな仕事をしているのを知り、井の中の蛙だったなと思いました」
それも1つのきっかけとなり、一般店を希望し、今年度から今の職場へ。担当は保険を専門に扱うプロ代理店だ。この4月から上司になった支社長の藤戸章博さんは安井さんのことを最初「奇特な人だ」と思った。
「一般店は代理店の業種の幅が広く、タフな仕事です」
大変なのは承知のうえだ。「仕事が数字に結び付いたときはうれしい」と話す安井さんはリアーズの活動とリンクさせながら業績アップを目指す。先日はTV会議でチームメンバーを前に、自社商品のよさを伝えるためのノウハウを披露した。
藤戸さんもその活躍に「女性の営業に足りないのは経験だけ。一つ一つ経験を積み重ね、家庭とバランスを取りながら力をつけていってもらいたい。将来はリーダーとしても期待したい」とエールを送る。