2020年に女性管理職30%。候補者は育っている

ダイバーシティは同社の成長戦略の中で明確に位置付けられている。なかでも社員の過半数を占める女性活躍推進は中核を担う。これまでも03年に国内大手金融機関初のダイバーシティを推進する女性活躍推進専門部署「女性いきいき推進グループ」をつくったり、女性のリーダーを育てるための女性経営塾をつくったりと相当力を入れてきた。

(上)取締役社長 西澤敬二さん
(下)人事部 特命部長(能力開発・採用・ダイバーシティ推進)小坂佳世子さん

リアーズはそうしたトップダウンの施策とは異なり、営業現場で働く女性たちの必要性から自発的に生まれてきた組織だ。西澤敬二社長のリアーズへの評価は高い。

「過去にも事務で採用した女性に対し、営業に出てみないかと背中を押してきました。しかし男性が築き上げてきた営業スタイルを見て、自信が持てないという女性が多く、やはり営業は女性に向かないという空気が社内に漂っていました。リアーズができ、女性らしい営業スタイルがだんだんと生まれてきて、それで十分営業として通用するという自信が芽生え始めています」

リアーズの活動にも触発され、エリア社員の中にも、不安はあるけど営業に挑戦してみたいという前向きな人が増えてきた。女性営業担当は16年度約800人増え、17年3月末で営業社員のうち女性の割合は約45%を占める。今年度は半数を超える見込みだ。

女性を核としたダイバーシティ戦略はスピードを増している。だが西澤社長は「気を抜けない」と言う。

「過去、日本は同質を重んじる国でした。以前読んだ民俗学の本に、日本語の『違う』には『異なる』と『正しくない』という意味があり、そういう国は少ないと書かれていました。ダイバーシティが難しい国だから、社内の風土文化をひっくり返すくらいの気持ちで取り組まなければなりません。私は本来、形式的な目標を立てるのは嫌いですが、女性活躍については20年までに女性の管理職比率を30%にするという旗印を掲げました」

17年7月末で女性管理職は15.4%と道半ばだ。しかし「候補者は育っていますから実現できると思います」と自信をのぞかせる。

自信の裏にはリアーズのほかにも、さまざまな人事施策で女性活躍を後押ししてきた実績がある。15年度からは、女性社員が働き続けるうえで1番の課題として浮上した残業問題を解決するため、男性や管理職層を巻き込みながら働き方改革に着手している。

人事部でダイバーシティ推進を担当する特命部長の小坂佳世子さん(93年入社)は、単に残業を減らすことだけが目的ではないと言う。

「男女とも仕事だけで精いっぱいになるのではなく、今まで残業していた時間を自己研鑽に充てて魅力的な人になっていくのが、会社の成長にもつながると考えています」

それを実現するために全社員対象にテレワークや、時間をずらして働けるシフト勤務といった働き方のバリエーションをいくつか用意している。実際にテレワークを使った社員は2000人に上り、その7割が「効率が上がった」と評価した。

柔軟な働き方で生産性を上げることは、女性の働きやすさにもつながる。かつては子どもの突発的な発熱で丸1日休まざるをえなかった。今は育児中の社員にはPCを貸し出しているので、テレワークと組み合わせて、看病しつつ仕事をし、ビデオ電話やチャットの機能を使って会社の人たちとの連絡や会議も可能だ。

「私もわが子が小さいころに、この仕組みが欲しかった」と小坂さん。

女性が働きやすい職場環境を日々整備するとともに、女性の可能性を大きく切りひらく制度作りも進む。女性だけを対象にするわけではないが、たとえば、公募ポストに手を挙げる「ジョブ・チャレンジ制度」(2~4年)や、16年に導入した「ジョブ交流制度」だ。ジョブ交流(半年間)は、地方のエリア社員が本社で商品知識や営業企画のノウハウを吸収し、それを現場に戻って生かしたり、本社のエリア社員が営業や保険金支払い業務を経験し、それを自分の業務に生かしたりする。