インフラ投資の拡大は続く

アジア新興国では、近年、インフラ需要が旺盛である。特に電力や、道路・鉄道・港湾などの交通・運輸インフラに対するニーズが強い。これは、国民の所得水準が上昇したことで、大量かつ高品質の商品やサービスが求められるようになったことや、将来の安定成長や産業構造の高度化に必要な外国企業誘致などを考える上で、インフラ整備の必要性が高まっているからだ。

インフラ需要の高まりはASEAN地域においても例外ではない。近年、ASEAN各国はインフラ整備向けの財政支出を増やし続けてきた。この動きが特に顕著なのが、インドネシアとフィリピンである。インドネシアのインフラ向け財政支出額は、2011年の110兆ルピア(1ルピア約0.0078円)から2016年には320兆ルピアに増加した(図表3)。一方、フィリピンも2011~2016年の6年間でインフラ整備向けの財政支出が2.8倍に拡大した。

インフラ整備向けの支出拡充の動きは、2018年も続くことになる。フィリピンのドゥテルテ政権は、2018年予算でインフラ整備向け予算を前年比+27.9%増に大幅に増やした。インドネシアの2018年のインフラ整備向け予算は前年比+2.4%と小幅の伸びにとどまるが、今後の補正予算を勘案すれば、最終的な伸び率はさらに高まる公算が大きい。加えて、インフラ建設プロジェクトは、完成までに長い期間を要するものが多い。このため、すでに工事が始まったプロジェクトも含め、工事が進展していくにつれて追加の建築機材需要といった経済効果が順次、顕在化してくるだろう。

インフラ投資の拡大は、2018年だけに限らず、中期的に取り組むべき課題になっている。2017年2月にアジア開発銀行が発表したレポートによると、2016~2030年にASEAN全体で毎年1570億ドルのインフラ投資が必要とされている。しかし、2015年時点で実施されたインフラ投資は、年550億ドルにすぎない。これは、インフラ整備のための投資に一段の拡大余地があることを示している。こうしたASEAN5でのインフラ投資を満たすためにも、わが国が資金・技術面を通じて支援すべき役割は大きい。