「1億円ランナー」に最も近いプロランナー大迫傑

一方、海外には実業団という仕組みはないようで、実力のある選手は「プロランナー」となるのが一般的だ。彼らが稼ぐ手段は大きく2つある。

ひとつは企業とスポンサー契約を結ぶこと。スポーツメーカーと契約できれば、シューズやウエアの提供を受けられる。トップランナーであれば、金銭的なサポートを受けられることもあるが、そうした選手はごくわずかだ。

もうひとつはレースで賞金や出場料を稼ぐことだ。たとえば毎年2月に開催され、3万人以上が参加する「東京マラソン」にも賞金が用意されている。優勝は1100万円。10位までに入賞すれば着順に応じて400万円から10万円の賞金が出る。さらに記録ボーナスもあり、世界記録がでれば3000万円、日本記録は500万円、大会記録は300万円が支給される。東京マラソンはかなり高額だが、同じように賞金の出るレースは世界中にたくさんある。

またトップランナーであれば出場料も獲得できる。世界トップクラスのランナーは、メジャー大会と複数年で数千万単位の契約を結んでいる。非公表だが、国内の主要レースでも、大会主催者側がトップ選手にボーナスや出場料を支給しているようで、日本人の目玉選手では数百万円が相場だといわれている。

▼「日本マラソン界のエース」の箱根駅伝・ニューイヤー駅伝時代

こうした状況で、いま日本で「1億円ランナー」に最も近いといわれているのが、快進撃を続ける日本マラソン界のエース、大迫傑(26)だ。

「1億円ランナー」に最も近い日本マラソン界のエース大迫傑選手

高校駅伝の名門・佐久長聖高校から早稲田大学へ進み、同大1年時の箱根駅伝1区でいきなり区間賞を獲得すると、2年時には「学生のオリンピック」と呼ばれるユニバーシアード1万mで金メダル。4年時には1万mで27分38秒31の日本人学生最高記録を樹立して、モスクワで行われた世界選手権(2013年)にも出場した。

大学卒業後は日清食品グループに入社して、ニューイヤー駅伝の1区で区間賞を奪うと、わずか1年で退社。「プロランナー」としての活動をスタートさせた。現在は米国を拠点に、「ナイキ・オレゴンプロジェクト」の一員として世界最高峰のトレーニングをこなしている。

昨夏のリオデジャネイロ五輪は5000mと1万mに出場。特筆に値するのは、今年4月には世界屈指の伝統を誇るボストンマラソンで3位に入ったことだ。初マラソンを2時間10分28秒の好タイムで走破し、あの瀬古利彦以来、初めて表彰台に立った。