最後に朝日社説は意見書にあるテレビ局の考査の役割に言及する。

「意見書は、放送局の考査は、放送内容に対する外部の干渉を防ぐとともに、あいまいな情報も入り乱れるネット空間と一線を画し、誇りを守る『とりで』だと記す」

MXテレビは誇りを守るこの「とりで」を崩してしまった。

ネット社会では、事実と異なる情報や根拠のない情報が、拡散してしまうことが問題になっている。いわゆる「フェイクニュース」である。そうしたなかで、テレビや新聞は、「自分たちはしっかり裏付け取材をしている」といって価値を訴えてきた。

今回の問題で、MXテレビはSNSで拡散する真偽不明の「フェイクニュース」と同じレベルにまで自らの存在価値を下げてしまった。自分たちの信頼性を、自ら傷付けてしまった。

「儲かればそれでいい」と考えていたのか

この朝日社説が出た翌日となる12月17日には毎日新聞も「放送業界の大きな汚点だ」との見出しを掲げ、冒頭から「(BPOの)事実の裏付けがないとの指摘は、裁判にたとえるなら有罪判決に等しい」と明確に批判する。

BPOは放送の言論・表現の自由を守るためにNHKと民放連が設立した第三者機関である。その役目は放送局に意見を述べるところにある。

毎日社説は「検証委は沖縄で現地調査し、基地反対派が救急車を妨害したとの放送は、事実が確認できないと述べた。反対派が活動の日当をもらっているのではないかとの放送も、裏付けられたとは言い難いと指摘した」と書く。

さらに「民放連とNHKが定めた放送倫理基本綱領は、報道に、事実を客観的かつ正確、公平に伝え、真実に迫るための最善の努力を求めている」と指摘したうえで次のように書く。

「MXは抗議活動を行う側に取材しなかったことを問題とせず、番組の完成版をチェックしていなかった。多様な論点を示す以前に必要な事実確認を怠った責任は重大である」
「MXは問題を指摘された当初『捏造、虚偽は認められない』と、問題視しない見解を出していた」

問題の番組「ニュース女子」は、DHCが放送枠を買い取っていた。制作の手間はかからず、放送するだけ利益になる仕組みだ。だがネット局のなかには考査に通らず、放送を見送った放送局もあった。なぜMXの考査は機能しなかったのか。儲かればそれでいい、という魂胆があったのだとすれば、それは恥ずべきことだ。