「失礼」を避ける、セーフティネット

いざ接待が始まったものの、会話が続かなくて困った経験のある人もいるでしょう。しかし、その原因を自分の英語力に求めるのは間違いです。話が盛り上がらないのは十中八九、話題選びがヘタなせいです。

ベストセラーになった『国家の品格』(藤原正彦著)は私が好きな本なのですが、その中でロンドン駐在の商社マンが得意先の英国人とディナーしたときの話が紹介されています。相手は「なぜ元寇は2度起きたのか」と日本の歴史について質問。商社マンは答えられず、以後は相手にされなくなったそうです。著者はこのエピソードから教養の大切さを説きたかったようです。しかし、私の見解は少し違います。ディナーの席でもっと気軽に盛り上がれる話題はたくさんあります。にもかかわらず、難易度が高い政治や歴史の話を相手にさせてしまったら、その時点で盛り上がっていないのだと思います。

では、盛り上がる話題とは何か。まずは、日本の観光情報です。来日中の旅程を聞き出して、どこで何を食べるといいのか一緒に探してあげると、それだけで軽く1時間は盛り上がれます。相手が新幹線で京都に移動するなら、「右の窓側の席を取ると富士山がよく見えるよ」と教えてあげればいい。

箸の使い方指南も鉄板のネタです。身振り手振りを交えながら教えることになるので、英会話が苦手でも間違いなく盛り上がります。

なお、会話中は、つねに笑顔を心がけましょう。日本人相手でも笑顔は大切ですが、相手が外国人の場合はとくに重要です。こちらがよかれと思ってやったことが、違う文化から見たらじつは失礼にあたるケースがあります。万が一失礼なことをした場合でも、笑顔でいれば悪気がなかったということが伝わりやすい。笑顔は、異文化コミュニケーションのセーフティネットなのです。