腸のトラブルを引き起こす糖質たち
それでは、どんな食べ物を避けるべきなのでしょうか。フォドマップとは、「FODMAP」のうち「F」と「A」を除いた「ODMP」の4文字から始まる発酵性の糖質を指しています。糖質の名称と代表的な食材は以下の通りです。
F(fermentable 発酵性)の以下の4つの糖質
O(oligosaccharides オリゴ糖:ガラクトオリゴ糖とフルクタン)レンズ豆などの豆類、小麦、玉ねぎなど
D(disaccharides 二糖類:二糖類に含まれる乳糖、ラクトース)牛乳、ヨーグルトなど
M(monosaccharides 単糖類:フルクトース)果実、蜂蜜など
A(and)
P(polyols ポリオール)マッシュルーム、人工甘味料(キシリトールなど)など
過敏性腸症候群のみならず、日々ガスやおなかの張りに悩んでいる人、潰瘍性大腸炎やクローン病、大腸憩室、逆流性食道炎の症状にも効果的がみられます。
食べ物は、口から入って食道、胃、十二指腸、小腸へと運ばれます。腸に不調を抱える人にとって糖質は厄介な栄養素で、小腸に入ると「吸収できるもの」と「吸収が悪く問題を起こすもの」とに大きく分かれます。このうち問題を起こすのが、フォドマップなのです。
過敏性腸症候群の人は、フォドマップを消化・吸収しづらく、大量に摂取すると小腸内で濃度が上がるため、それを薄めようとして血管内から小腸内へ大量に水分が送りこまれます。その結果、小腸は「水浸し」状態となるのです。水によって腸が刺激され、運動が過剰になり、おなかのゴロゴロや張り、下痢などが生じます。
小腸で吸収されなかったフォドマップは、吸収されないまま大腸に進みます。大腸のなかでは腸内細菌たちが小腸で吸収されなかったフォドマップをエサとして、待ち構えています。フォドマップは大腸の腸内細菌のファーストフードになり急速に発酵が進みます。
この結果、大腸内で過剰な発酵を起こし、そのガスでおなかがパンパンに張るのです。過敏性腸症候群の人の腸内細菌は、無症状の人の腸内細菌と種類が異なり、過剰な短鎖脂肪酸を発生し、短鎖脂肪酸が過剰な人ほど過敏性腸症候群の症状が強いことがわかりました。
低フォドマップ食はこういったことを引き起こす4つの糖質の過剰摂取を押さえ、腸の健康を守る食事法です。
フォドマップの含まれる食べ物は複数ありますが、どの食品があわないかは一つひとつ自分の身体に聴いて確かめていくことになります。
まずは3週間フォドマップの摂取を完全に中止。するとおなかのいろいろなノイズが収まります。腸が静かになったところで、1週間に1種類ずつ4つの糖質を再開していきます。調子を悪くする糖質を含んでいると、おなかが過剰に反応するため、自分にあっていない食品がはっきりわかるはずです。全部の高フォドマップ食品がずっと食べられないわけではないことに注意してください。高フォドマップ食でも食べられるものがあるのです。
「傾聴」ということばにちなんで、私は「傾腸」を提唱しています。これは自分の腸の声をしっかりキャッチし、それに従うことです。自分の腸がどんな食べ物で調子を崩すかは、自らが腸と対話しながら実際に試さなければわかりません。