眠れない夜は、誰にでもあります。24時間365日、仕事が頭から離れない経営者やハードワーカーはなおさらです。そんな夜は、クラシックの楽曲を聴いてください。Youtubeでもかまいません。横になって聴くと、不思議と心が落ちつき、眠りにつける曲をご紹介します。音楽の力は偉大です――。

バッハが語る「まだまだ、これからですよ」

資金繰りのこと、新規事業計画のこと、人手の問題、取引先との関係に、プライベートが絡みつく。頭蓋骨の内側にべっとりとタールが塗られているような重い不快感と、それを気にしないようにするその努力がますます意識を覚醒させる。いつまでも睡魔はやってこず、ベッドサイドにあるスマホを手にとってしまう。ますます眠れなくなる。SNSで知る友人知人がみな、自分よりも幸せそうに見える。ブルーライトの弊害よりも、よほど精神衛生上よろしくない。

そんな眠れない夜にこそ、クラシックの楽曲を聴いてほしい。AmazonやSpotifyなどのストリーミングサービスを試してもいい。横になったままで聴く、こんな音楽を提案したい。

羊が一匹、羊が二匹……と数えるように聴ける曲。それがバッハ『平均律クラヴィーア曲集第1巻 第1番 ハ長調』である。インテンポで進行する軽やかな旋律を追うと、規則正しく心臓の鼓動を整えてくれる。音量が大きくなったり小さくなったりもしない。メロディがドラマチックに気分を揺さぶるわけでもない。バッハの曲は眠れない夜に余計な感情を呼び起こさない。疲れて高ぶった感情を穏やかに沈め、平常心を導いてくれる楽曲である。

バッハに代表されるバロック音楽は、朝の清々しい時に聞きたいというクラシックファンも多いのだが、実はこの清々しい規則正しさが感情の高ぶりを抑えたい時間にこそ、最適である。