四六時中、仕事のことを考え、下手をすれば1日の休みも取れないのが経営者の真の姿です。おちおち風邪も引いていられません。東洋医学の考え方に、健康と病気の間の状態「未病」があるのをご存じでしょうか。漢方の専門家が「未病」のうちに健康に戻す、カンタンな方法や知恵を教えます――。
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社長は風邪なんて引いていられない

金の話にしても、人間関係にしても、こじらせると一大事。日ごろから何ごともこじらせないように気を配り、堅実が服を着て歩いているような、ある社長さんがめずらしくこじらせてしまったのが「風邪」でした。

最初は鼻水が出る程度で、「たかが風邪だから」と高をくくっていたものの、次第に喉が痛くなって咳が止まらなくなり、頭痛も無視できなくなってきた。さらに高熱を発しながらも迫る納期に間に合わせるため、無理して職場に顔を出したら、「病原菌が来た」とばかりに周囲からは白い目を向けられ、旧友との久々の会食もあえなくキャンセル。すがるようにして病院に行ったら「肺炎の気配があるから、とりあえず入院して、点滴打っておきましょう」とは……まったくもう。その社長、「馬鹿がうらやましく思った」そうです。

さて、本当に馬鹿は風邪を引かないのでしょうか。成人は年に2、3度は風邪を引くと言われています。身近な病気ながら、厄介な存在で、実は具体的な治療法がありません。薬局に行けば多様な風邪薬が並んでいますが、そのいずれもが咳や発熱、鼻水などの症状を緩和させるだけで、「風邪」という病気を治してくれる薬は一つとしてないのです。このことに気づいている方は意外と少ないのではないでしょうか。

いろいろな病名があって、それぞれに治療薬が開発される現代において、定番の風邪に治療法がないのは不思議な印象も受けますが、そのあたりを東洋医学の観点から探ってみると、「なぜ馬鹿は風邪を引かないのか」という真相にも近づけそうです。