ビリオネア名言録【1】
「保有期間はどのくらい?」と聞かれ「永遠である」
ヒントの一つはゲイツ氏のコメントに出てきた「確実性」である。再び同氏のコメントを引用してみよう。
「もし20年先を考えて投資するなら、普通は変化の激しいハイテク業界を選ばないでしょう。ちょっとした変化に乗り遅れるだけで致命傷を受けます。マイクロソフトのような企業は20年間で数回は事業構造を抜本改革しなければなりません。しかし、コカ・コーラについてはかなりの確実性を持って20年先の姿を描けます」
米飲料大手コカ・コーラは、バークシャーの最大保有銘柄だ。コカ・コーラの事業構造が比較的単純で、しかも同社のブランドが強力であることから、数十年先の姿まで比較的確実に予測できるというわけだ。だからこそバフェット氏は、同社株の大量取得が明らかになった1989年に「保有期間はどのくらい?」と聞かれると、「永遠」と答えたのだ。つまり、コカ・コーラはバークシャーの「永久保有銘柄」であると宣言したのである。
バフェット氏がバークシャーの株主向けに書く「会長の手紙」の2007年度版には、次のような記述がある。
「非常にすばらしい事業には、耐久性の高い『堀』があります。その堀があるおかげで、投下資本が高い利益を出し続けることができるのです。資本主義はダイナミックな世界であり、高い利益率を達成している『城』は、競争相手からひっきりなしに攻撃を受けます。そんな状況下でも永続的な成功を可能にするためには、低コスト構造を達成している業者(保険のガイコ、小売りのコストコ)、あるいは世界的なブランドを持つ業者(コカ・コーラ、ジレット、アメリカン・エキスプレス)が持つ強力な防壁が欠かせません」
バフェット氏は自分で理解できない事業には投資しない。将来を予測できないからだ。ゲイツ氏が創業したマイクロソフトへ投資しないのもそのためだ。一方、コカ・コーラとの出合いは1936年、同氏が六歳のときにまでさかのぼる。当時、小遣い稼ぎのためにコカ・コーラを売り歩いていた。
今もチェリー風味の「チェリーコーク」が大好物で、1日に何本も飲んでいる。コカ・コーラのことは身をもって理解しているというわけだ。
同じことはほかの主要銘柄についても当てはまる。代表例は有力紙ワシントン・ポストだ。少年時代、一時的にオマハから離れてワシントンに住んでいたバフェット氏は、アルバイトで同紙の新聞配達を手がけ、若いサラリーマンに匹敵するほど稼いでいた時期もあった。数十年後、ワシントン・ポストの大株主になるとともに、取締役にもなった。バークシャーが保有するワシントン・ポスト株の時価は、当初の投資額の120倍以上にもなっている。