たった一つだけの後悔
本社大移転計画が無事終わり、さあ横浜に帰れると思った水本さんに、今度は経営企画部行きの切符が渡される。新事業企画グループの部長として、M&Aやベンチャーの育成を手掛ける仕事だ。
「世の中の流れを捉えて、自社がどの方向に進むべきかを考え、技術を経営に反映させる仕事です。面白かったですね」
その後は、人事部の採用グループの部長に。
「自分が採用した子たちが成長する姿がうれしくて。みんな自分の部下という思いです(笑)。各部門のトップが採用面接で出てくるので、そういう人たちと話せる機会が持てたのも収穫でした」
そしてCSR推進部部長を経て役員となる。
「会社が本気で私を役員に育てようとしたんでしょうね。女性活躍推進という言葉は好きではありませんが、風が吹いているから乗ったところもあると思います」
ただ、一つだけ後悔がある。博士号を取ろうと学校に通ったのに、途中で断念したことだ。
「TXプロジェクトのときはデータを見る時間もなくなり博士課程を中退しました。研究者として20年やってドクターを持っていないのはやっぱり恥ずかしい(笑)。自分を甘やかしたかなと思います」
博士号こそ逃したが、理系のキャリアは技術者を採用するときや、ものづくり会社での調達の仕事で大いに役立っている。
Q. 好きなことば
とくになし
Q. ストレス発散
趣味に没頭すること
Q. 趣味
音楽鑑賞、美術館めぐり、スキー、テニス、料理、旅行
Q. 愛読書
分野にとらわれず、何でも読む
撮影=澁谷高晴