バーミキュラにはできなかった「炒め」「低温調理」が、ライスポットで可能に

ライスポットに付属するレシピ本。白米や玄米の炊き方だけでなく、さまざまな料理のレシピが掲載されている。

企画書の中で大きなポイントになったのが「炒める」というキーワードだ。バーミキュラのレシピにも煮込む前の「焼き付け」のような調理はあったが、炒め物はなかった。

「鉄のフライパンは熱の伝わり方がいいですし、鋳物で炒めることの可能性を感じていました。ただし鉄のフライパンと違って鋳物の鍋は重いので、振ることができない。自分では思うように火力調整ができないのです。でも(IHヒーターで)温度コントロールができれば、いつも同じ温度で調理できる。ライスポットなら炒め調理が可能なのではないかと思いました」(土方副社長)

また、この企画書には入っていないが、土方副社長の心の中には「低温調理」も秘められていた。低温調理とは、通常の加熱より低い温度(注:タンパク質が凝固する、60度前後の温度帯)で肉や魚を加熱し、ジューシーに仕上げる調理法。炊飯器を作れるくらいきめ細かい温度管理ができれば、高級レストランなどで手間と時間をかけて行っている低温調理もできるはずだと考えていた。

「ターゲットには『トップシェフ』もあったので、低温調理は重要な要素でした。絶対できると思っていましたが、できるかどうかまだ分からなかったので、企画書を書いた時点ではまだ心の中に秘めていました」(土方副社長)

レシピ本に掲載されている料理の一部。無水ポトフ、ローストビーフ、ケーキ、魚のコンフィ、茶碗蒸し、パンなどさまざまな料理が作れる。

低温調理機能が、高級レストランで評価を得る

ライスポットは炊飯と「中火」「弱火」「極弱火」の火加減に加えて、30度から95度まで1度単位で設定が可能な低温調理機能を搭載している。この機能は、すでに国内の高級レストランや料理店などに採用され始めていると土方副社長は語る。

「低温調理はシェフの方々にとても人気で、ミシュランの星付きのシェフの方々にも高く評価されています。ごはんを炊いている和食店や、低温調理に活用しているフレンチのお店などですね。今、お店で使っていて気に入ったので、今度米国でオープンする新店でも入れたいと相談をいただいているお店もあります」

ガスの直火もしくはIHクッキングヒーターを使って、バーミキュラを自分でコントロールするときにはできなかった「炒め調理」ができるようになったのは、料理の苦手な人には画期的なことかもしれない。中火に設定してしばらくして「炒めOK」と表示が出ると、温度が一定に保たれるため、直火で調理するときのように焦らずに済む。また、低温調理が可能になったことで、トップクラスのシェフが思い描いたレシピを完璧に再現できるようになった。

「これはトップシェフに使ってもらうときにやってもらいたかったことです。ライスポットは、“家電”というよりは“道具”。『思い通りに作れる』ということが、シェフにはすごく大事なのです。鍋はバーミキュラだから火入れは完璧にできますし、何度で何分というレシピを思い通りにやれます。ライスポットを使うことで、バーミキュラの良さをさらに認識してもらえています」(土方副社長)