国会での審議が注目されているテロ等準備罪と受動喫煙防止法案。五輪開催のためには法律の成立が急務と説明されることが多い2つの法案だが、問題点を石破茂衆議院議員に聞いてみた。

2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催のため、成立を急がねばならないと説明されることが多い「テロ等組織犯罪準備罪法案」(以下、テロ等準備罪)と「受動喫煙防止法案」。どちらの法案も推進派は「世界に比べて日本は遅れている」と説明している。

本当なのだろうか?

どちらも個人の自由や権利の制約、侵害が懸念される法案ゆえ賛否が分かれているが、いまひとつよくわからない。そこで政策通の理論派として知られる石破茂議員に聞いてみた。条文次第という条件付きだが、石破氏は「テロ等準備罪法案」には肯定的で「受動喫煙防止法案」には懐疑的な立場である。

▼テロ等準備罪新設の法案
過去2回(2005年、09年)廃案になった共謀罪の構成要件を厳しくして、組織的犯罪集団が重大な犯罪を計画し、メンバーの誰かが犯罪を実行するための準備行為を行った場合などを処罰する法律案。実行行為概念を中心としている従来の刑法学の体系との整合性、適用される団体や組織、共謀、重大な犯罪などの定義、立法事実の有無(法律を必要とするような事実が存在するかどうか)などで意見が分かれている。

▼受動喫煙防止法案
「努力義務」とされていた受動喫煙の防止を、多数の者が利用する施設等の一定の場所での喫煙の禁止と、管理者に喫煙禁止の掲示や喫煙の制止等を義務づけるもの。官公庁、大学、社会福祉施設は「建物内禁煙」。未成年者や患者が利用する学校や医療機関は「敷地内禁煙」。飲食店やホテルなどサービス業は「建物内禁煙」としたうえで喫煙室の設置を認める。違反した場合、施設の管理者や喫煙者に罰則(たたき台では50万円以下)が適用される。

▼国際組織犯罪防止条約(TOC条約)
「組織的な犯罪集団」による資金洗浄、麻薬や銃の密売など、国際的組織犯罪を防止するうえで、国際協力を強化するための当事国間の権利と義務等について定めるもの。国連総会で2000年に採択され日本も署名したが、政府は「条約を実施するための国内法が成立していない」として締結には至っていない。条約では4年以上の懲役・禁錮の刑を定める「重大な犯罪」について、犯罪の合意(共謀)などを処罰できる法律を制定するよう各国に求めている。

まずは「テロ等準備罪」に肯定的な理由を聞いてみよう。

石破 茂●自由民主党所属の衆議院議員(10期)、水月会(石破派)会長。防衛大臣、農水大臣、自民党政調会長、幹事長、内閣府特命担当大臣(国家戦略特別区域担当)兼地方創生担当大臣等を歴任。ミリタリー系プラモデルの愛好家、キャンディーズのファンとしても有名。

「これまでも国際組織犯罪防止条約を批准するために努力をしてきました。ただ単に条約を批准するだけであれば、この法律が絶対に必要かどうかは議論のあるところです。実際、北朝鮮だって批准しているぐらいですからね。

しかし、重大犯罪が実行されてしまってからでは遅いので、その前にきちんと防止するための法整備は必要だと総論的には思います。それは五輪があるからとか、五輪までにというものではない。成立させるべきものは早く成立すべきでしょう。

無差別大量殺人なんていうのは、本当は謀議をしてもいけないし、準備行為をしてもいけないし、ましてや実行してはいけないことですけれど、準備行為と組み合わせることによって、謀議が罪になるということです。だから、どんな恐ろしい犯罪を謀議しても、準備行為がなければ捕まらない」