評価ではなく、素直な気持ちと関心を示す

社長が機嫌を損ねた理由。それは、写真展で入選したほどの自信作を、目下の人間から「なかなかのもの」や「お上手でたいしたもの」といった言葉で褒められたからです。これらの言葉は、上からの目線で作品を評価する言葉です。

そもそも、目上の人を“褒める”という行為自体がよくありません。褒めるというのは、「親が子供を褒める」、「先生が生徒を褒める」というように、目上が目下に対してする行為です。安易に褒めてしまうと、相手は目下扱いを受けたような気持ちになってしまいます。

『闘う敬語』朝倉真弓(著)大嶋利佳(監修)プレジデント社刊

では、「すごい」と思ったその気持ちを、どう表現すれば誤解を招かずに済むでしょうか?

「社長、すごいっすね!」

……いやいや。目上の方に対する言葉なのですから、さすがにこの言い方はダメでしょう。でも、気持ちを素直に言葉に表すという意味においては、惜しい表現です。

「社長、素晴らしい作品ですね」
「鮮やかな色彩が素敵ですね」

どうでしょう? 「なかなかたいしたもの」「上手」などと評価されるよりも嬉しく感じませんか? さらに、

「どうやって撮影されたのですか?」

などと関心を示せば、社長も気分よく話をしてくれたに違いありません。