種苗業界で国内大手のサカタのタネが、2016年5月期の連結決算で純利益が37%増(前期比)の52億円と、25年ぶりに最高益を記録。国内は人口減少などで需要が伸び悩むが、なぜ業績が好調なのか。
種苗業界で業績を左右するものは気候と為替だ。
まず気候は16年、比較的落ち着いており、世界的にも大きな干ばつなどがなかった。
為替は円高気味とはいうものの、一時の70~80円台というレートに比べれば円安で、輸出産業でもある種苗業界にとっては利益が出やすい状況だった。
さらなる好材料もある。日本は人口減少時代に突入したが、世界ではいまも人口は増加し続けており、野菜を含む食糧需要は拡大し続けている。
たとえばブラジルでは栽培に向かず今まで食習慣もなかったブロッコリーの消費が増えている。また、先進国でも、健康志向の高まりなどにより、野菜の消費量や栽培量は増加傾向にある。
こうした世界的な野菜の需要増は、日本の種苗業界への追い風である。
なかでも注目されるのはインドだ。国民の約5割が農業従事者で、GDPの約2割を占める。国民の約6割となる約7億人がベジタリアンだと言われ、野菜を大量に消費する「野菜大国」だ。
サカタのタネを筆頭に、国内の種苗メーカーは「F1種子」を開発、販売しているが、その特徴は高品質で生産性が高い野菜の安定栽培である。この種子は長年の研究開発の成果であり、後発企業への参入障壁となる。インドではF1種子を持つ種苗メーカーは皆無といっていい。
近い将来、農作業を機械が行う「農業の自動化」も現実味を帯びてきた。ここでもF1種子が必要とされるなど、種苗業界の今後に注目したい。
(構成=衣谷 康)