発泡酒、第3のビールを税収で補えるか
確かに、一向に抜け出せないデフレ経済下にあって、生活防衛の面でも低価格が支持されてきた発泡酒や第3のビールが値上がりするとなれば、ビール系飲料全体の消費動向にも影響してくる。値下げとなるビールは復権する可能性はあるにしても、発泡酒、第3のビールを税収面で補えるまで回復できるかという確証はない。その点で、財務省の意向が見え隠れする。
同時に、いまや税制改正でも「政高党低」を鮮明にする「一強」状態の官邸が支持率低下を懸念し、消費者の増税感をできるだけ薄めようと動いたとも取り沙汰されている。税額が3区分に分かれるビール系飲料の酒税は世界的に例がなく、日本固有のいわゆる「ガラパゴス化」の道を辿ってきた。その歪みは結果として、メーカー大手各社が区分ごとに商品開発を競い合う体力消耗戦に明け暮れた。
さらに、大型M&A(企業の合併・買収)が相次ぐなかで世界からも取り残された。17年度改正で打ち出した税額統一は日本勢の国際競争力向上を図る観点もあっただけに、今後10年近くを費やす点に違和感も残る。ビール大手は税額統一を評価するものの、アサヒビールの平野伸一社長が一本化された際の税額は「主要諸外国と比べ非常に高い水準」と語るなど、一段の減税を求める方向で足並みを揃える。
しかし、大手各社はそれぞれに3区分の販売比率は異なり、税額統一に対するかなりの温度差や思惑の違いも存在する。自民党税制調査会の宮沢洋一会長が「メーカーの研究開発の成果はビールに一本化される」と述べるように、各社の商品化の流れは税額統一に伴い、いずれ収斂するに違いない。これで若者のビール離れに象徴される長期低落傾向に歯止めをかけられるかは見通せず、消費者動向を睨みながらの手探りの商品開発に追われることに変わりはない。