1時間の練習で整ってくる字形

では、美しい文字を書けるようにするには、一体どうすればいいのでしょう? そうです、先の悪筆の3大要素さえなくなれば、文字は見違えるほど美しくなります。悪筆を劇的に改善するのが、次の3つのメソッドです。

1つ目が、字形を整える「隙間均等法」です。文字の空間がつぶれないように矯正する方法で、文字を書くとき、文字の空間、つまり線と線の隙間を見ながら、隣り合った隙間が均等になるように書きます。慣れないうちは、心の中で「き、ん、と、う」と唱えながら文字を書くと、意識しやすくなるでしょう。方眼紙に3~4センチメートル四方のマス目をつくって、そこに書く練習をすると、隙間のバランスがよりきめ細かく取れるようになります。即効性のある方法なので、1時間も練習すれば、字形はかなり整ってくるはずです。

2つ目が、文字の中心線を揃える「中心線串刺し法」です。ノートなどに文字を書くとき、普通なら罫線と罫線の間に書きますが、あえて罫線の上に書いていきます。罫線を文字の中心線と見立てるわけです。文字を書いたら、文字の外枠を赤ペンなどで囲ってみてください。○△□といった、さまざまな形になるでしょう。それらの形の真ん中に罫線が通っていれば、おでんの具が串に刺さったような状態になって、文字の配列が整って見えるはずです。

3つ目が、ペン先をうまくコントロールするための「手首固定法」です。これは文字を書くときの、手の動かし方の改善法です。手の動かし方に悪いクセがあると、文字の書き方の改善がなかなか進みません。ペン先は手のひらと指の筋肉を使って動かすと、コントロールしやすくなります。手首(小指側の側面)を机に固定してください。そうすれば、手のひらや指の筋肉の動きがペンに伝わりやすくなって、ペン先の可動域も広がります。

▼本誌編集部MさんとOさんの「悪筆」ビフォーアフター
<Mさん>
Before:隣り合う隙間に○印を入れてみると、隙間がバラバラ。つぶれたところもあって読みにくい。
After:「き・ん・と・う」と唱えながら隙間を意識して書いただけで、見違えるようにきれいになった。
<Oさん>
Before:文字の外側を囲ってみると、文字全体が左側に寄って、中心がずれていることがわかる。
After:中心線を意識すると、バランスがよくなった。一つひとつの文字の中心を一直線に揃えるように書くと、真っすぐな読みやすい文になる。


▼青山教授の手首固定法の実践
手首(小指側の側面)を机に固定する。そうすれば手のひらや指の筋肉の動きがペンに伝わりやすくなり、ペン先の可動域も広がる。


このように正しい手の動かし方を身に付けると、力まず、指をなめらかに効率よく動かせるので、文字を書くのが楽になって、勝手につなげたり、省略することも抑えられます。また、文字が心地よく書ければ、文字を通して、そうした気持ちが読み手にも伝わります。

ビジネスパーソン、とりわけ、企業の役員や幹部であれば、直筆でサインをしたり、お礼状や依頼状を自らしたためたりする機会も多いでしょう。そうした場を大切に、ぜひ自身の個性輝く美しい文字で、周囲の方々とよりよい人間関係を築いていただきたいと思います。

(野澤正毅=構成 加々美義人=撮影 PIXTA=写真)
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